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コラム

ベトナム現地の日系企業がCO2削減に取り組む方法

【ONE-VALUE株式会社】

ベトナムに進出する日系企業におかれては、日本本社からの指示を受け、CO2削減に積極的に取り組んでいる企業が多いのではないだろうか。確かに、ベトナムは再生可能エネルギーの開発が有望な国で、政府の投資奨励政策も近年になり、かなり整備が進んできた。
 しかし、電力事情が日本と全く異なるベトナムにおいて、目標値を達成することは容易ではないようである。
 多くの場合、排出されるCO2を実質ゼロにするための施策には膨大なコスト発生が試算され、海外の再エネ電力証書の活用も多額のコストがかかってしまう。
 この記事では、ベトナム現地の日系企業がCO2削減に取り組む上で、目標を達成するための施策にかかるコスト最適化、アプローチ方法について詳しく解説していきたい。

CO2削減に関わるベトナムの制度の動向

まず始めに抑えるべき点は、電力およびそれに付随するCO2削減に関する制度が日本とベトナムで大きく異なることである。この点は、前提となる重要な部分ではあるが、日本の本社と認識が合わず、ベトナムでの取り組みを進めるにあたり、大きな障壁となることが想定される。

日本と大きく異なるベトナムの制度

日本においては、菅内閣総理大臣が2020年10月26日の所信表明演説において、日本が2050年にカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出と吸収でネットゼロを意味する概念)を目指すことを宣言した。業種によって大きく異なるが、これに基づいて、現在多くの日本企業が2040~2050年にかけて、サプライチェーンの温室効果ガス排出量の削減やCO2フリーに取り組んでいる。

[図表]ベトナムにおける電力事業体制と外資規制の有無
[図表]ベトナムにおける電力事業体制と外資規制の有無

ベトナム現地法人でも2030年や2040年に向けて、具体的な目標設定を行う企業が多いが、多くの日系企業が、ベトナムでの今後の再生可能エネルギーのロードマップや、ベトナムでの環境投資の方向性など、詳しいことが不透明である実態に課題を抱えているのではないだろうか。
 ベトナムにてCO2削減に取り組む上で、大きな支障となることが、ベトナムの電力制度が日本と大きくことなることであろう。発電事業においては、外資規制がなく、外資系企業も参入できるが、電力の送電(卸売り)、小売はベトナム電力公社(EVN)の垂直統合にあり、自由な市場は現状では存在していない。

ベトナムではクリーンな電力の環境価値はEVNに帰属する

日本の場合、オフサイトで発電した電力は自己託送が可能であり、CO2フリーの電力を自社の工場や店舗に供給できる。

自己託送とは、遠隔地にある自社発電所で発電された電気を、送配電ネットワークを通じて自社設備へ送電する仕組みである。小売電気事業者を介さず電気の供給ができる。通常の自家消費では、発電所は自社の屋根や隣接地に立地していなければならないが、自己託送制度を活用すれば遠く離れた発電所からの電気を活用できる。

[図表]日本とベトナムにおける自己託送制度とクリーン電力の環境価値の帰属の違い
[図表]日本とベトナムにおける自己託送制度とクリーン電力の環境価値の帰属の違い

一方で、ベトナムの場合はオフサイトで発電した電力はCO2フリーという価値がEVNに帰属するという問題がある。つまり、再エネ発電事業者がクリーンな電力をEVNに売電した場合、CO2フリーな電力の価値はEVNに帰属し、自己託送制度が成立しない。電力需要者が電力供給を受けても、それは一般的な電力として供給を受けるものであり、CO2フリーな電力をEVNから購入することはできない。
 ベトナム政府内では入札制度への移行や直接電力供給契約(Direct Power Purchase Agreement=DPPA)のモデル導入が検討されており、既に試験的な動きも始まっている。これはEVNを介さずに、発電事業者が電力需要者へ直接電力を販売できる仕組みである。しかし、現状では2021年に試験運用が開始することを政府が定めているに過ぎず、実用的な運営がされている訳ではない。

CO2削減の最適化を行うための具体的な方法

ベトナムと日本の電力制度が大きく異なることを確認したが、これを踏まえたうえで、日本企業は具体的にどのように取り組めばよいだろうか。その具体的な方法として、以下の3点を挙げたい。

ベトナムでCO2削減を実施する施策①:自社での省エネ・再生可能エネルギー導入

工業団地に入居する企業が大型の施設を持つ日本企業の多くは、自社が所有または賃貸している屋根に太陽光発電パネルを設置するケースが増えている。しかし、オンサイトでの発電所の設置、省エネ対策、すなわち発電量に基づく削減可能なCO2の量にも限界があり、自社の目標値に達しないケースもある。

ベトナムでCO2削減を実施する施策②:再生可能エネルギー事業への投資

CO2削減の施策として、1つ有効な手段は再生可能エネルギー事業への投資であろう。ベトナムであれば、太陽光、風力、バイオマス発電が検討にあがるが、最も実施しやすいのは太陽光発電であろう。設備容量当たりの投資金額も比較的低く抑えられる。

これまでFIT制度に支えられてきたベトナムの太陽光発電市場であるが、今後は入札制度への移行、設置形態別でのFIT価格引き下げが検討されており、現在は第8次国家電力マスタープランの策定を基に市場の移行期にある。今後の市場動向を見通した上でのアクションプラン策定が必要である。

[図表]ベトナムの電力マスタープランにおける2030年・2045年までの電源構成比の目標
[図表]ベトナムの電力マスタープランにおける2030年・2045年までの電源構成比の目標

2021年9月上旬、ベトナム商工省は「第8次ベトナム国家電力マスタープラン(PDP8)」のドラフト版を公表した。2021年2月には以前のベトナム政権がPDP8ドラフトを公表していた訳であるが、政権が変わったため、「第8次国家電力マスタープラン(PDP8)」は再度見直しが行われた。

新たな9月版のPDPドラフトでは、注目されていた石炭火力の電源構成比が高められる一方で、再生可能エネルギーの占める割合は引き下げられるという結果になった。

PDP8ドラフトの内容をより具体的に見ると、9月版のPDP8ドラフトでは、2030年までの運転開始済み電源容量は130,371~143,389MWとなっており、各電源の比率は石炭火力:28.3~31.2%、ガス火力:21.1~22.3%、水力・揚水発電:19.5~17.73%、再エネ:24.3~25.7%、輸入:3~4%となっている。2045年までの運転開始済み電源容量は261,951~329,610MWで、各電源の比率は石炭火力:15.4~19.4%、ガス火力:20.6~21.2%、水力・揚水発電:9.1~11.1%、再エネ:40.1~41.7%、輸入:3~4%となった。

ベトナムでCO2削減を実施する施策③:補助金の活用

日本政府が支援する補助金を活用する手段も考えられる。例えば、環境省による二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism:JCM)である。JCM制度は途上国と協力して温室効果ガスの削減に取り組み、削減の成果を両国で分け合う制度である。ベトナムはパートナー国となっており、既に補助率の上限や、クレジットの半分を日本政府に振り込まなければならない等のいくつかの条件があるが、設備補助事業としては非常に規模が大きい補助金である。このほか、実証実験を支援する経済産業省の支援等、様々なメニューがあり、検討の余地が大きいと考えられる。

結論:自社の戦略と組み合わせた最適化が最重要

基本的な原則には立ち返ってしまうが、最も本質的なことはベトナムの再生可能エネルギー市場の動向を十分に把握し、自社の事業戦略を実施する上で、CO2削減の施策を自社にとって最適な形で行うことであろう。

取り組みの第一歩として、まずはベトナムの再生可能エネルギー市場の成長性(ポテンシャル)を計測し、将来の見通しを十分に把握することである。2021年は第8次国家電力マスタープランが策定され、今後のベトナムの電力市場の動きが決まる重要な年になる。引き続き、ベトナムの電力・再エネ市場、企業の動きについて注視していきたい。

ONE-VALUE株式会社の紹介

ONE-VALUEはベトナムで事業展開を検討する日系企業の経営課題を解決するベトナム専門コンサル会社です。

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(会社概要)
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