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福岡県2都市、新工業団地に期待高まる

【2019年4月18日付 中小企業・地域経済面 日刊工業新聞電子版

福岡県が開発を進める「久留米・うきは工業団地」で徐々に動きが見え始めた。二つの自治体にまたがる広大な敷地には2月にが新工場の建設を発表し、新たな産業創出への期待が高まっている。一方でインフラ整備などに向けた取り組みはこれから。地域の中長期的な発展に向けた思いを両市のトップに聞いた。

インタビュー/久留米市長・大久保勉氏 街のブランド力向上へ

久留米市長・大久保勉氏

―開発で地域がどう変わるとみますか。

「資生堂進出は久留米にとって大きなイベントであることは間違いない。1000人規模の雇用があると聞かれ、グローバル企業としてのブランド価値の高さは地域に活気をもたらす。ただ、時間軸で考えると稼働まで猶予がない。資生堂幹部と話し合いを進めているが、技術系人材の供給やインフラ整備など全面的な協力体制を築かなければならない」

―地元自治体としての受け入れ態勢は。

「工業団地は高速道路のインターチェンジからアクセスが良く、久留米は九州の交通の要衝でもある。ダイハツ工業のエンジン製造拠点などもあり、新たな進出企業を支える基盤はある。その上で消防や下水道などインフラ構築を最優先にやらなければならない。開発で公害が発生するのではといった住民不安には丁寧に説明し、企業との橋渡し役を担っていく」

―既存産業との融合をどう進めますか。

「工場のスムーズな稼働は必要条件。十分条件として進出して本当によかったと思ってもらうべき。久留米は福岡県が進める『福岡バイオバレープロジェクト』の中心都市であり、研究機関が集積している。単なるモノづくりから研究開発を担う都市となるように積極的に提案したい。一方で久留米に多くの優良企業があるが学生にあまり知られていない。新卒に限らず、広報活動による発信が必要だ」

―地域の長期的な発展に結びつけるには。

「製造業は『メード・イン・ジャパン』の回帰が起きている。日本で製品を作る必要性を高めるには製品を作る雇用を生むだけでなく、企業とともに街のブランド価値を一緒に高めることが必要。民間企業ができないことに自治体として積極的に関わっていく」

インタビュー/うきは市長・高木典雄氏 人材供給、最大限に支援

うきは市長・高木典雄氏

―開発が進み始めたことの受け止めは。

「資生堂の進出発表は大歓迎。風光明媚(めいび)な自然環境と企業イメージが一致したことが何よりだ。一方で10代後半から20代前半の若者の社会流出が止まらない。地域経済分析システム(RESAS)を通じて原因を探ると、雇用の場がないことで地元を離れるケースも多い。開発は雇用の受け皿としてだけでなく、原材料調達の動きなど地域への波及効果は大きいのではないか」

―人口減少が進む中で人材をどう送り出していきますか。

「人手不足の時代にあって地場企業も人材確保に苦しんでいる。そうした状況に向き合いながら両立を図らなければならない。せっかく新たな企業が進出しても、人が集まらないとなれば申し訳ないこと。基本的には進出企業の計画が明らかにになってからしか具体的な動きはできないが、地元として最大限の支援を進めなければならない」

―福岡県や久留米市との連携については。

「道路インフラや排水対策などに関しては、企業進出が本格化するにあたって大丈夫だと思っている。一方で、働き手となる人が来る体制をつくらなければならない。久留米市とはこれまでも久大本線活性化協議会を設置し、工業団地のアクセス向上のためJR九州に新駅設置を要望してきた。開発が本格化していく中で久留米市との連携をより密にしたい」

―進出企業が地域に定着するためには。

「資生堂については工場見学を通じて地域に開放する計画を聞いている。進出企業の工場見学の後に地域の観光資源を生かし、広域的な回遊性を高める提案もしたい。経済情勢は何ともならない部分はあるが、進出企業の稼働後も定期的な意見交換ができる関係性を構築していきたい」

【記者の目/企業と緊密な関係構築を】

両市長が口をそろえたのが「企業イメージを生かして地域の価値をどう高めていくか」ということ。グローバル企業の進出はそれだけで地域には一大事だが、受け身のままでは地域の本質的な発展につながらない。自治体としてアクティブな動きを見せ、企業といかに緊密な関係性を構築できるかが、より求められてくる。

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