少子高齢化が進み、日本の総人口が減少し続けている。現状の予測では人口減少は今後も進行していく見込みであり、労働力不足や市場の縮小が課題となる。そのような中、アジア各国の人口は高い伸び率を示し、巨大な消費市場、人材市場として期待されている。製造業を中心に海外生産が拡大しており、進出企業が活用できる工業団地やレンタル工場などの開発も進んでいる。
国際通貨基金(IMF)が2019年10月に発表した「アジア太平洋地域経済見通し」によると、アジア経済は19年に5・0%、20年に5・1%の成長を見込んでいる。新型コロナウイルス感染拡大への懸念もあり、今後の推移は不確定だが、現状では高いレベルでの成長が続いている。
特に東南アジア諸国連合(ASEAN)は総人口が6億人以上かつ、所得水準の向上も目立っており、巨大市場として魅力的だ。帝国データバンクによると16年4月時点でASEANに進出している日本企業は1万1328社に上る。最も進出企業数が多い国はタイで4788社、続いてシンガポールに2821社、ベトナムに2527社が進出している。
海外進出に当たり、重要なポイントとなるのは現地市場への適応だ。日本で成功した事業をそのまま海外に展開すると、現地の顧客ニーズなどに対応できず失敗するケースがある。徹底した現地のマーケット分析により、自社の競争力を高めることが成功のカギとなる。海外に自社を根付かせ、競争を勝ち抜くという心構えを念頭に検討したい。
人材育成も企業理念の浸透や生産性向上の観点から欠かせない。日本と現地の文化の違いにより、連携した企業活動が困難となる場合があるため、できる限り日本国内での研修を丁寧に行うことが望ましい。技術者を対象とした「技術研修」、企業経営や工場管理の手法を共有する「管理研修」などでノウハウを現地に定着させる工夫が必要だ。