“先回りのケア”重要
ベンチャー・キャピタルでスタートアップへの投資の経験を積んできた私は2015年に独立し、モノづくりベンチャーに特化した支援プログラム「Makers Boot Camp」を立ち上げた。開発に悩むスタートアップに投資し、その資金を元手に試作に特化した京都の中小企業ネットワークである「京都試作ネット」に開発協力してもらうという座組だ。
プロ同士の取引であれば、モノづくりはロジックで完結する。仕様書を基に調達コスト、工賃、歩留まり率などを弾き出し、量産までのスケジュールができあがる。しかし、スタートアップは製造業以外の世界からやってくることが少なくない。そのため、プロ同士では阿吽(あうん)の呼吸で通じていたやりとりが成立せず、スタートアップと中小企業の間の溝が広がる。我々も初期は両者の溝を埋めるのに苦心した。契機となったのは「スマートマット」という製品だ。マットの上に在庫品を載せて重量をモニタリングし、一定の軽さになった時点で追加在庫を自動発注する。考案したのはIT業界出身の若者たちだ。他の企業と作った試作品を基に我々で作り直し、ユーザーテストを行い、手応えがあったものを量産まで進めることに成功した。現在は3万台以上を生産し、破竹の勢いで成長している。
ここで我々が気づいたのは、…