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コラム

タイにおける工場・倉庫操業の基礎知識

【GDM (Thailand) Co., Ltd. 代表取締役社長 高尾博紀】

タイで工場、倉庫業を行う場合、どのような土地が対象となるか見ていきましょう。下記の3つに区分できます。

  • 1.タイ工業団地公社(IEAT)傘下の工業団地(Industrial Estate)
  • 2.タイ工業団地公社(IEAT)以外の工業団地(Industrial Park/Land)
  • 3.工業団地の外で工場建築許可、工場操業許可が取得できる工業用地

それぞれ特徴とメリット・デメリットがありますので1つずつご説明していきます。

【1.タイ工業団地公社(IEAT)傘下の工業団地】

アジア工業団地

タイ工業団地公社と呼ばれるIEAT(Industrial Estate of Authority of Thailand)は、タイ政府工業省傘下の国営企業です。主な役割は(1)工業団地を造成しインフラを整備すること、(2)工業団地の管理及び運営、(3)民間企業と共同し工業団地造成や管理運営を行うこと―です。バンプー工業団地やバンプリー工業団地に代表される、30年以上前に開発された工業団地はIEAT単独で管理運営をしているケースが多い一方で、近年開発された工業団地では民間企業と積極的に共同運営されるケースが多くなっています。民間企業との共同運営として有名な工業団地には、アマタナコン工業団地やイースタンシーボード工業団地、ピントン工業団地、アジア工業団地などがあげられます。タイ工業団地法の規定により、この区分の工業団地は「Industrial Estate」と呼ばれます。

IEATの工業団地に入居する主なメリットは以下の通りです。

  • ・工場建築許可の取得が容易
  • ・工場操業許可の取得が容易
  • ・外国人出資比率が49%以上でも土地取得可能
  • ・外国人労働許可証の取得が容易

これらの手続きは、各工業団地内にあるIEAT出張所もしくはIEAT本部で設けられているワンストップサービス制度を利用することで、手続きの効率化を図ることができます。

【2.タイ工業団地公社(IEAT)以外の工業団地】

民間企業がタイ投資委員会(BOI)から投資奨励を受け、独自に開発する工業団地がこの区分に該当します。IEAT傘下の工業団地との区別をするため、タイ工業団地法では「Industrial Park」や「Industrial Land」と呼ばれます。IEAT傘下の工業団地も、BOI承認を受け民間企業が開発した工業団地も、日本語では“工業団地”と呼びますが、法律上の規定は異なるため注意が必要です。この区分の工業団地として有名なものにはロジャナ工業団地やナワナコン工業団地、304工業団地などがあげられ、IEAT傘下の工業団地のようにワンストップサービス制度がないため、工場建築許可や工場操業許可は各管轄役所に個別に申請をする必要があります。また外国法人がこの工業団地の土地を購入する際には、BOIから土地所有許可を得なくてはなりません。

加えて、2015年1月にBOI制度が抜本的に改正された結果、下記のような事例が発生しているため注意が必要です。

事例:10年ほど前にタイに進出をした際、BOIの土地所有許可を取得し土地を購入した。業績が伸びたため2015年1月以降(新BOI制度制定後)に第2拠点を構えようとした。しかしBOI制度の更新により、当企業の業種が恩典業種から外れていたため、BOI取得での土地取得が不可となっていた。これらを踏まえ第2拠点はタイ工業団地傘下の工業団地を購入するか、合弁先を探して外国人出資比率49%未満のタイ内資会社を設立し、土地を取得するかという選択となった。

【3.工業団地の外で工場建築許可、工場操業許可が取得できる工業用地】

工場団地外の土地取得には入念な調査が必要

工業団地外の土地を購入するには、BOIの土地所有許可を取得するか、外国人出資比率49%未満の法人で土地取得するかのいずれかになります。工場団地外の土地取得には、主に以下を入念に調査する必要があります。都市計画に基づき事業実行が可能かどうか、建築基準法に基づき建築予定の建物の建築が可能か、工場法に基づき工場操業許可が取得できるか、環境規制対象であるか、各種インフラの整備状況は整っているか―など、調査内容は多岐に渡ります。

各種確認事項、申請事項は複雑ですが、工業団地外での工業用地には主に以下のようなメリットがあります。

  • ・賃上げ交渉やストライキに巻き込まれにくい。
  • ・好立地物件を選択できる
  • ・比較的安価な物件を取得できる

近年、自動車メーカーを中心に基本給や賞与の上昇が続いており、工場が集積するエリアでは他社の賃料上昇や賞与についていけない場合、工員の離職原因となったり、ストライキへと繋がる可能性が強まっています。工業団地外の場合は、そのようなエリアを避けることが可能です。

また近年の工業団地は、主要幹線道路から離れたところに立地している傾向があり、物流的観点からは好立地とは言えなくなってきています。工業団地外なら幅広い立地から選択できるため、自社にとって最適な立地を選択できる可能性が高まり、場合によっては比較的安価な物件を取得できるというメリットもあります。タイでも法令順守思考が年々高まってきていますので、専門家の意見を取り入れ入念に事前確認することをお勧めいたします。

 

<著者プロフィール>

GDM (Thailand) Co., Ltd.
代表取締役社長 高尾博紀

早稲田大学商学部卒業。2008年より在タイ。タイ国内において800,000平方mを超える不動産取引実績を有し、企業の不動産取得支援を行う。

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