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特集

モノづくりの次代をつくる 川口新郷工業団地 「共同受配電」でCO2排出量削減

【2022年7月21日付 日刊工業新聞 埼玉県川口市特集】

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川口市は江戸時代から鋳物の街として知られ、今も東京近郊の産業集積地として機能する。川口新郷工業団地は工業専用地域にある市内唯一の工業団地として鋳造や機械加工、板金加工、めっきなど約80社が入居し、市内のモノづくりを支えている。組合が電力会社から一括して特別高圧電力を受電し、各社に配電する「共同受配電」に早期から取り組んでいるのも特徴だ。

19年ぶり交代

次期理事長 萩山 孝夫 氏(左)/理事長 石川 義明 氏(右)

川口新郷工業団地協同組合は、約19年間に渡り理事長を務めた石川義明氏(石川金属機工社長)が退任し、8月1日付で荻山孝夫氏(岩宗鋳造所社長)が理事長に就任する人事を決めた。就任に向けた抱負やこれまでの振り返り、組合企業の発展に向けた今後の取り組み方針について石川氏、荻山氏に聞いた。

―19年ぶりの理事長交代となります。

荻山氏「石川氏は川口鋳物工業協同組合の理事長を兼任していて多忙ということもあり、打診を受けた。私もこれまで理事を20数年勤めてきたためお引き受けした。歴代理事長、特に石川氏は雇用対策の一環としてインフルエンザワクチン接種や健康診断など、福利厚生の充実に力を入れてきた。また、玉掛など免許を取るときの講習も合同で実施している。これらの方向性を継承し、組合企業やそこで働く従業員が工業団地に来てよかった、これからもここで続けていきたいと思える環境を作る」

石川氏「私は表に出てがんがん引っ張っていくタイプ。どちらかと言うと個性が強い。他方、荻山氏は地道で几帳面、人に慕われ、嫌われることはまずない性格だ。次の発展に向けて、内に秘めた闘志で組合員をまとめ上げてくれるのではと期待している。近年は組合に入るメリットは何かと聞かれることが多く、共同受配電の他にも打ち出す必要がある。退任後も同じ工業団地に立地することに変わりはない。8月以降は顧問として、できることは側面で応援したい」

―この19年を振り返っていかがですか。

石川氏「あっという間で、本当に19年も経ったのかという感じ。東日本大震災もあったし、工業団地内で言えば変電所の一度目の更新もあった。組合員の価値を上げるため、(金融機関から融資を受ける際の担保となる)土地の値段を上げることにも取り組んだ。とにかく組合員から見て良い組合にしたいという一心でやってきた。ただ、企業は生き物なのでこれで終わりということがなく、やればやるほどやりたいことは増える。思ったことの半分もできていないという気持ちだ」

節電対策が奏功

歴代理事長の方針を引き継ぎ、福利厚生の充実や地域交流の活発化を荻山次期理事長(左)。石川理事長は顧問として後方支援に回る

―組合設立当初から共同受配電を行っています。

石川氏「共同受配電は組合設立の目的でもある。組合が電力会社から6万6000ボルトの高圧電力を一括受電し、自前の変電所を通じて変電し、最終的に各工場に100ボルト、200ボルトまで電圧を落として供給する仕組みだ。一番の目的は節電。工場によって電気をたくさん使うとき、あまり使わないときがある。お互いに電力を融通し合うことで電力使用量を抑えることができる。また、二酸化炭素(CO2)排出量削減にもつながる。21年度は3919.78トンの削減効果があった」

荻山氏「東日本大震災後の節電要請への対応でも役立った。例えばA社が電気を使いたいと言えば、B社は電気炉の使用を控えて明日に回すなど、努力して電力使用量を抑えることができた」

―地域との関わりを重視しています。

荻山氏「毎年8月に町内会との共催で『ばんばん祭』を開催してきたが、コロナ禍で中止が続いている。仮に今年も中止になったとしても、ほかにも地域と関わる術はあるはずだ。例えば、災害時、組合事務所のある新工会館を避難所として開放する、組合所有の駐車場の一部に避難所を兼ねた建物を作る。組合員から手が挙がれば、工業団地独自でオープンファクトリーを行うのもいい。とにかく近隣住民や外注先を探す企業などに広く工業団地を知ってほしい」

―今後どのようなことに取り組みますか。

萩山氏「共同受配電を行うための変電所が耐用年数を超えており、安定供給に向けてできるだけ早期に更新したい。投資額は6億円程度になる見込みだ。また、各社に設置している電力メーターをスマートメーターに置き換え、組合事務局による検針作業を自動化したい。工業団地内には130本の電柱があり、それらも順次交換する必要がある」

石川氏「カーボンニュートラルとまではいかないが、これまで温室効果ガス削減にはかなり貢献してきたつもりだ。だが、新たに温室効果ガス削減に取り組む事業者には支援がある一方、我々には現状何の補助金もない。変電所の更新費用もかさみ、このままではやめざるを得なくなる。埼玉県や川口市には働きかけているが、国にも何らかの施策を検討してほしい」

2分でわかる川口新郷工業団地協同組合

川口新郷工業団地協同組合

http://www.shingou.or.jp/

川口新郷工業団地協同組合YouTubeチャンネル

https://www.youtube.com/channel/UC6n9Dq9ZjMtEgkHHAIfhtKg

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