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関西の高速道路網整備が加速 周辺の企業立地や物流施設の集積に期待

【2018年08月15日付 建設・エネルギー・生活面 日刊工業新聞電子版

首都圏と比べ未整備区間が多かった関西の高速道路網の整備が動きだした。西日本高速道路(NEXCO西日本)は新名神高速道路、阪神高速道路は大阪湾岸道路西伸部や淀川左岸線延伸部の建設を新たに進める。道路網充実は渋滞緩和に加え、周辺の企業立地や物流施設の集積にもつながる。また既存道路と並行する新設道路の“2重ネットワーク”構築は、災害時の代替輸送路活用でも期待される。(神戸・中野恵美子、大阪・新庄悠)

整備が進む新名神高速道路(神戸市北区の生野大橋付近、NEXCO西日本提供)

施設立地相次ぐ

西日本地域では6月中旬の大阪北部地震、7月上旬の西日本豪雨と、相次いだ災害で一時的に高速道路の通行止めが広域で発生した。西日本豪雨は山間部で土砂災害も起こし、NEXCO西日本は広島県内をはじめ西日本で複数の「重篤被災箇所」を指定した。復旧の遅れから、物流面で輸送遅延や荷受け停止なども余儀なくされた。

西日本に拠点を持つ多くの企業のサプライチェーンにも影響を及ぼし、道路ネットワークの重要さが改めて浮き彫りになった。

NEXCO西日本は、関西の内陸部に新名神高速道路の建設を進めている。3月に神戸ジャンクション(JCT、神戸市北区)―川西インターチェンジ(IC、兵庫県川西市)間の16・9キロメートルが開通した。大阪と兵庫が新名神でも結ばれ、並行する既存の中国自動車道では、2018年度における10キロメートル以上の渋滞が、前年度比60%減の13回へと緩和が予想される。

「新名神周辺に物流需要を呼び込めるようになった」。NEXCO西日本の酒井和広社長がそう効果を語るように、新名神と中国道の結節点や新名神沿線の大阪北部には、物流施設の立地が相次ぐ。物流不動産大手のプロロジス(東京都千代田区)は、新名神のインターチェンジ近くに複数の物流施設を開設および計画し、大和ハウス工業や三井不動産なども大型物流施設を開設した。NEXCO西日本では、19年以降に関西の新名神沿線で立地が予定される新規物流施設の累計の延べ床面積を、15年比の約8倍となる計148万平方メートルと見込む。

今後、新名神は複数区間の開通を経て、23年度には神戸JCT―滋賀県の大津JCT間の約80キロメートルがつながる計画だ。

関西の高速道路網

交通分散見込む

物流の充実に加え、災害への備えでも新名神への期待は強い。NEXCO西日本の酒井社長は「新名神は並行する中国道とも一定の距離があり、同時被災の可能性は低く災害時に有効だ」と見る。阪神高速道路は橋梁が約8割を占めるため、豪雨の影響はほとんど受けない構造という。

一方、都市部の慢性的な渋滞緩和を目指し、阪神高速は新たな道路建設に取り組む。

大阪都心部の淀川左岸線延伸部はその一つで、豊崎IC(仮称、大阪市北区)―門真JCT(大阪府門真市)間の約8・7キロメートルの整備を行う。整備計画は決定し、早期着工を目指している。完成すれば大阪都心北部から通過する交通分散が見込め、大阪市を囲む新たな環状道路にもなる。

阪神高速道路では臨海部の道路網構築にも乗り出す。大阪湾岸道路西伸部は、六甲アイランド北(神戸市東灘区)―駒栄(同長田区)間の14・5キロメートルを12月までに着工する。2030年をめどに完成し、大阪と神戸西部を結ぶ阪神高速3号神戸線と“2重ネットワーク”を築く。

医療産業を集積

湾岸道路西伸部は神戸市内の二つの人工島「六甲アイランド」「ポートアイランド」を東西に横断し、大阪港や神戸港の物流拠点とも近接するため、企業誘致との相乗効果が期待される。

特にポートアイランドは、神戸市が積極的に医療産業の集積を図り、企業誘致が進む。7月末時点で346事業者が拠点を構えるまでになり、道路網拡充でさらに弾みがつきそうだ。

関西圏は首都圏、中部圏と比べ、自治体の財政難などから高速道路網の整備で後れをとってきた。関西経済連合会の松本正義会長は「新たな高速道路は早急に整備すべきだ」と訴える。

幅広い物流ニーズがある関西圏で高速道路網の充実は産業の活性化に加え、「災害時の代替輸送路としても社会的意義がある」(阪神高速道路の幸和範社長)とされ、整備を加速できるか、注視される。

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