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コラム

新産業団地も整備予定“産業集積地”山口県に学ぶ地方創生

【2017年04月12日付 4面 社説 日刊工業新聞電子版

安倍晋三首相が「地方創生」を唱えて2年半が過ぎた。東京一極集中を是正し、国全体の活力を取り戻す取り組みは地方でも歓迎されている一方で、都市間格差も浮き彫りになっている。格差是正はひとえに、産学公金の熱意しかない。

先週末、北九州市小倉北区のホテルで山口フィナンシャルグループ(FG)が「地方創生ビジネスマッチング」を開いた。山口銀行など傘下3行の支店長300人が集い、地場企業の説明や製品展示を見て取引先と結びつける催しだ。グループの地盤は広島、山口、福岡3県と広域だが、各地で同様の事業を手がけて業容を拡大している。

山口県は安倍首相の地元だけに、地方創生に特に熱心だ。村岡嗣政知事は人口減の克服と地方創生実現のため、成長分野への投資や創業支援、女性の活用などを訴える。重要視しているのが産学公金の連携だ。山口FGのマッチング事業はそれに呼応する。

県庁所在地の山口市は近年、産業集積が著しい。市内には五つの産業団地が整備されているが、すでに残り2区画と完売に近い。これを受け、同市は新団地造成の準備を始め、2017年度早期にも整備地を決める計画だ。評価されている点は、陸海空の交通インフラが整う、人材確保が容易、A級活断層がなく事業継続計画(BCP)を立てやすいなどだが、一番は立地・雇用奨励金や用地取得補助金など独自の支援措置にある。

中でも次世代自動車や医薬品・医療機器など、重点立地促進4分野への優遇制度が厚く、テルモや小野薬品工業といった医療関連大手の誘致に成功した。医療関連企業の進出は理系技術者や女性の雇用確保の特効薬と期待されている。

人口減に歯止めをかけ、地域を活性化させる真の地方創生を実現するためには、誘致だけでなく、労働者の住環境や子育て・教育支援など課題は多い。必要なのは地元の産学公金がどれだけ危機感を共有し、本気になって諸課題に向き合うかにかかっている。山口県の連携の取り組みに学ぶべき点は多い。

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