日系専用特区で事業参画
西松建設がラオス南部の都市、パクセーで工業団地の開発・運営に力を入れている。工業団地はラオス政府の経済特区にあり、進出企業は税制などで優遇される。特徴は日系中小企業専用の特区であることだ。ラオス政府は低賃金を武器に日系中小企業を誘致し、雇用創出や人材育成につなげたい考え。一方、西松建設は発展途上のラオスで、開拓者として工業団地の開発・運営を軌道に乗せ、事業拡大を目指す。現地の事情を報告する。
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進出を期待
「まだまだ開発できる土地がある」。西松建設の望月敏洋国際事業本部企画管理部担当部長は、パクセーの広大な工業団地の土地を示しながら、日系企業の進出を期待する。
日本人にはなじみがないパクセー。サワンナケートと並ぶラオス第2の都市で、人口は約10万人。首都ビエンチャンから飛行機で南に50分の場所にある。街は低層の建物が道路の両脇に並び、郊外は緑の木々や草地が続く。工業団地には空港から車で約25分で着く。建物は事務棟と、進出第1号の日系企業「三幸ラオ」の生コンプラントぐらいで、赤茶けた大地が広がり、周囲に低木が生い茂る。
ラオス政府は2015年8月、パクセーに日系中小企業専用の経済特区「パクセー・ジャパン日系中小企業専用経済特区」を設置。ラオス政府と地元企業が15年12月、同特区を開発・運営する会社を設立し、西松建設も出資して事業参画した。開発面積は195ヘクタール。第1期分の約66ヘクタールのうち、17年8月に約13ヘクタールの造成を終え、土地使用権を販売している。
友好深め発展
同特区の政府担当者であるチャンパサック経済特区委員会のカンポン・ヌアンセアンシー総裁は「ラオスと日本の友好関係を深められる。日本の高い技術を導入してラオスを発展させたい」と日本企業の誘致で雇用創出や人材育成を期待する。地元には家内工業的な産業しかないため、日本流ビジネスの導入で労働人材の能力底上げを意図する。
同特区への進出は、日系企業の出資比率が1%以上あれば可能。中小企業に限定したのは「パクセーの規模では5000人の作業者を提供できない」(カンポン氏)と地元で供給できる作業者数と、作業者の取り合い防止を考慮した。ただ300人以下に抑えれば大企業も進出できる。
誘致は重大使命
特区に進出した企業は利益が出てから最長10年間は免税、個人の所得税は5%などの優遇税制を受けられる。また、ラオスは発展途上国で特恵関税が適用されるため、先進国がラオス製品を輸入する場合は無税などの利点がある。カンポン総裁は「政府関係者はみんな、この特区に興味を持っている」と期待の大きさを示す。
西松建設にとって、工業団地への日系中小企業の誘致は重大な使命。現在1社が進出済みで、5月に完成するレンタル工場に2社が進出する。望月氏は「ラオスは近隣国と比べても競争力がある。これをいかに日系企業に知ってもらうかがカギ」と語る。