良好な関係築き事業創出
安い人件費
ラオス・パクセーにある日系中小企業専用の経済特区「パクセー・ジャパン日系中小企業専用経済特区」。同特区の政府担当者であるチャンパサック経済特区委員会のカンポン・ヌアンセアンシー総裁は「人件費は他国に比べて安い」と強調する。同特区で工業団地を開発・運営する西松建設の望月敏洋国際事業本部企画管理部担当部長は「最低賃金は月額約110ドル」と説明する。
周辺国と比較すると、カンボジアが約175ドル、ベトナムで最も安い地域が110―120ドルで、ハノイ、ホーチミンが200ドル弱。手当込みの人件費ではタイの3分の1になる。
高い物流コスト
課題は「物流コストが高い」(望月氏)ことだ。一定量の物量がないため、パクセーには物流会社の定期便がない。タイやベトナムから来たトラックが空荷で帰ることが多く「往復も片道も料金が変わらない」(同)。自社でトラックを仕立てる方がコストを安く抑えられる。
パクセーの工業団地に、最初に進出した三幸ラオ。建設業の三幸工務店(岡山県北区)が岡山コンクリート工業(同東区)と共同出資で設立した。コンクリート2次製品をラオス国内で製造・販売する。工場は5月完成を目指して建設中だが、すでに生コンプラントが稼働している。
事業の立ち上げを担当している三幸工務店の宇塚陸夫さんは「ラオスはインフラが脆弱(ぜいじゃく)で市場がある」と進出理由を語る。現地でプレキャストコンクリートを生産する。現場で打設するコンクリートと比べて工期短縮が可能で、高品質で管理できる。
ただコスト高もあり、現地のニーズはそこまでの製品を求めていない。当面は政府開発援助(ODA)でコンクリート2次製品を使う事業を狙う。さらに製品の需要を開拓するため「官民のコンソーシアムをつくる」(宇塚氏)計画だ。
生産効率向上
工業団地ができあがる前の2013年、パクセーに進出したウイッグメーカーのレオンカワールドラオス。タイに生産拠点を置いて日本に輸出していたが、人件費の高騰からラオスにも工場を構えた。上田昌彦社長は「昨年にタイよりも生産性が上がった」と指摘する。生産効率を上げるため、インセンティブを導入したり、働きやすい環境づくりに取り組んだりしてきた。「現地スタッフと良好な関係を築くことが重要」と秘訣(ひけつ)を明かす。
ラオスの発展はこれから。ビジネス環境が不十分などのリスクもあるが、ビジネスを創り出す魅力も備える。
(編集委員・村山茂樹が担当しました)