社会インフラが大きく変わる。自動車業界はIoT(モノのインターネット)、人工知能(AI)、ビッグデータなどのITの革新で自動運転システム、自動車の電気自動車(EV)化などで100年に一度の大改革が目前に迫っている。一方、総務省が発表した2018年1月29日公表の住民基本台帳人口移動報告では、東京圏への人口移動が依然として進んでおり、17年の東京圏は11万9779人の転入超過。前年に比べ1911人増加し、22年連続の転入超過が続き相変わらずの東京一極集中が進んでいる。社会インフラが変わる中で東京圏の人口集中は、地方への企業誘致施策だけでは解決がつかない状況になっている。
国内産業立地の動向
経済産業省は17年1―6月の全国の製造用等の工場立地動向を発表した。それによると工場立地件数は499件(前年同期比9・4%増)、工場立地面積は569ヘクタール(同1・7%増)となり、立地件数は3年前(13年)の水準にまで回復した。中でも食料品は立地件数、面積ともにけん引している一方で、輸送用機械の立地件数は減少しているものの、面積は大幅に増加している。ただ、過去の立地動向に比べると地域の雇用拡大を図るまでの推進力はみられない。
一方、人口の東京圏一極集中は依然として止まらない。総務省の住民基本台帳人口移動報告の17年の統計では、東京圏への転入超過が22年連続で続いている。(図1)
この状況から経済産業省は、新たな政策として「地域未来投資促進法」を17年7月に施行した。同法では、企業誘致と併せて地域特性を活用した事業を生み出し、経済的波及効果の高い中核企業を育成しようとする自治体の取り組みを支援する方向を打ち出した。特に支援する中核企業は、地域におけるリーダーシップの高い設備投資意欲と成長力を有し、域内外を結ぶバリューチェーンの要となる企業である。現在、全国で約2000社の中核企業が各地域で指定され、地域経済けん引事業として国から集中的に支援が行われている。
現在、この未来投資促進法の基本計画は、45都道府県から145計画が今年1月末までに国の同意を得て地域で企業育成支援を実施することになっている。
自動車のEV化による設備投資動向
フランスと英国が2040年以降、ガソリン車、ディーゼル車の販売を禁止するとの報道に、世界の自動車メーカーは一様に驚きを隠せなかった。さらに中国において化石燃料車の製造販売も禁止するとの報道も追い打ちをかけた。
日本はどうなるのか。一部のメーカーでは、既にEVの生産、販売を行っているが、わが国の環境対策車は依然としてハイブリッドが主流となっている。二酸化炭素削減の環境面から自動車産業の100年に一度の大転換の時期が間近に迫っている現状では、いつまでもハイブリッドに頼っていられない。
各メーカーは本腰を入れEV化に取り組んでいる。しかし、普及にはまだ多くの課題がある。その一つが燃料となる電池の生産である。今のリチウムイオン電池は価格面、安全面、走行距離面でまだEV化に対応できるまでの技術が進展していない。特に安全面での課題解決が早急に求められる。また、燃料となる急速充電器の開発とガソリンスタンドと同じような充電器ステーションなどの社会インフラ整備が必要となってきている。さらには急速充電により、大量の電力が必要となることで電力不足の心配もあり、電力供給体制の整備が追いつくことができるのかなど、EV化による課題が山積している。
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