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特集

【産業立地特集】コロナ禍における産業立地

【2020年9月23日付 日刊工業新聞 8面 広告特集】

企業業績は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言などにより経済活動が停滞したことが影響して、大きな打撃を受けている。特に観光業をはじめとするサービス産業や航空・鉄道業など輸送産業の企業業績の落ち込みが大きい。製造業においても同様に、自動車産業や海外需要に頼っていた機械産業が落ち込んでいる。その一方で政府のサプライチェーンに対する支援やテレワークなどの働き方の変化を背景に、新たな需要が発生し、設備投資や工場立地が進む地域も発生しつつある。


製造業の設備投資に影響

内閣府が9月8日に発表した4―6月期2次速報の国内総生産(GDP)成長率は、物価変動の影響を除く実質で前期比7.9%減、年率換算では28.1%減だった。名目GDPは7.6%減(年率27.2%減)となった。

減少率は、リーマン・ショックの2009年1―3月期(前期比年率17.8%減)を超え、過去最大の下げ幅を記録している。新型コロナ感染症の拡大に伴う緊急事態宣言などにより、全国的に経済活動が停滞したことが設備投資に影響している。

新たな事業所の設備投資については、日本立地センター(東京都千代田区)が「設備投資(新設・増設・移転)の計画がある」とする企業372社に対して「新型コロナの感染拡大に伴う設備投資計画への影響に関するアンケート調査」を今年6月に緊急に実施し、213社の回答を得ている。

調査結果では、コロナ禍における設備投資計画を進めるかどうか「検討中」とする企業が39.2%と最も多く、次いで「既に実施した」が17.0%、「予定通りに実施する」は16.5%であった。このコロナ感染拡大のなかで、計画通りに設備投資を進めた企業は、合わせて33.5%に及んでいる。

一方、「延期した」は15.1%、「中止した」は9.4%で、設備投資計画への影響は約25%超に及んでいる。感染拡大が危惧される中では、「検討中」とする企業が延期・中止に傾く可能性もあり、不安定な動きとなっている。

また、直近の東日本大震災における津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金(製造業等立地支援事業)による補助を受けた企業の執行状況でも、工場建設や機械設備の導入が海外からの建設資材や機械部品の輸入が停滞していることから、大幅に遅れているとの声も聞かれる。今後も資金調達や取引先の問題を含め、モノづくりのサプライチェーン問題も大きく、予断を許さない状況が続く。

国内サプライチェーンの再構築

新型コロナ感染拡大により、生産活動における国内外のサプライチェーンが寸断され、需給バランスの崩壊と工場閉鎖や設備投資の遅れが発生した。そのため政府は、生産活動に対する金融や補助金などで緊急支援を行い、モノづくりの再構築を図っている。

特に海外製造に頼っていた製品を、国内生産に戻すための設備投資支援策「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業補助金」制度が設けられた。この補助金制度の先行募集が今年5月に行われ、57事業者が採択決定されている。

採択事業者の設備投資内容は、グラフの通り海外生産に頼っていた自動車用金型や生分解性ポリマー、パワー半導体など「生産拠点の集中度が高い製品・部素材の供給途絶リスク解消のための生産拠点整備」のための事業者17社(中小企業1グループ含む)、感染予防マスクや消毒液、医療機器、検査キットなどを生産する「国民が健康な生活を営む上で重要な生産拠点等の整備」を行う事業者40社である。

また、地域別の公募申請は、関東甲信地域の企業が最も多く、17事業所で特に群馬県の事業所が約半数の8社を占めている。次いで多い地域は、東北地域で12社、近畿地域が10社との順となっている。

新たな地域創生「テレワーク」

コロナ禍の企業活動の停滞は、新しい働き方やビジネスシステムを模索する中で、新たな産業立地による地方創生が注目されている。

長野県では、IT企業誘致・振興を目的に、企業のブランチやサテライトオフィスの設置を検討する企業向けに、お試し感覚で体験できる「おためしナガノ」事業を立ち上げた。この事業は、施設の利用料、移転費用、交通費、通信環境整備費など事業用費用の補助をするものである。

「おためしナガノ」事業の成果を踏まえて、18年度からは内閣府の地方創生推進交付金を活用して、空き店舗や空き施設を活用したテレワーク拠点を整備する「リゾートテレワーク拠点事業」が始まったことで、長野県はモデル地域の市町村を選定した。初年度は軽井沢町、茅野市、白馬村が選ばれ、「信州リゾートテレワーク」がスタートした。

その中の一つ茅野市は、1992年に経済産業省が産業業務施設の地方分散を目的とした産業立地政策、地方拠点法におけるオフィスアルカディア構想を検討する段階で、茅野市周辺で「八ヶ岳リゾートオフィス」を民間企業が実証した経験を生かした取り組みを行う。

長野県茅野市「ワークラボ八ヶ岳」施設のワークスペース(公式ウェブサイトより)

茅野市のリゾートテレワークの企業誘致を担うのが、「ワークラボ八ヶ岳」である。この施設は森ビルほか2社との共同事業で、JR茅野駅に直結した商業施設内にある。東京や名古屋への交通の便の良さや製品設計、3Dモデリング事業を手がける企業の入居も魅力となっている。現在、施設のブース席、企業・団体・プロジェクト単位で入居できるオフィススペースとブース席16区画がすでに埋まっている。

リゾートテレワークは、全国的に広がりをみせておりテレワークを活用して、リゾート地・温泉地などで余暇を楽しみつつ、仕事や地域活動を行う「ワーケーション」(Workとvacationを合わせた造語)が全国的に普及している。ワーケーション活動を普及促進させるためには、実施する自治体の情報交換が必要であるとの認識から、2019年の11月にワーケーション自治体協議会(現在会員数100自治体)が立ち上げられ、新しい働き方や地方創生を自治体が後押ししている。

ウィズコロナ時代 経済活動の知恵

コロナ危機により外出自粛、企業の生産活動や消費活動が落ち込むなどの行動変容をもたらし、新しい働き方改革やビジネス様式を大きく変えている。特にテレワークや通販といった人との非接触化、ソーシャルディスタンスが求められる中では、おのずと社会のデジタル化が進む。

地域や企業は、ウィズコロナ時代をどのように生き残るか、柔軟なビジネスモデルの模索が進められている。今は「守りの時」であり守りの中でどのようなビジネスモデルで企業力を高め、コロナ後の社会で攻めに反転できる体制の確立が重要となっている。自治体においては、このような変容する時代に合った、リゾートオフィスやサテライトオフィスの整備が一つの企業誘致戦略の知恵となる。

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