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特集

【産業立地特集】ジャパン・ブランドとインバウンドがけん引

【2019年3月13日付 日刊工業新聞 7面 広告特集】

英国ではEU離脱の問題から、製造業の「英国離れ」が加速している。すでに、「ホンダが英国工場を2022年に撤退」の発表に地元は大きな混乱をきたしている。政府の関税システムを変えることが、これだけ大きな問題となるとは思いもよらなかったと推察される。わが国では、海外から国内に生産工場を回帰する企業が増えている。その要因として、ジャパン・ブランドとインバウンドのけん引がある。


工場立地は大規模化の傾向

工場立地面積・件数の推移

経済産業省の2017年工場立地動向調査(速報)によると、全国の工場立地件数は1009件で前年比1・7%増となり、前年に比べて微増である。また、立地面積は1228ヘクタールで同9・4%増となっている(図1)。件数・面積ともに、リーマン・ショック後(09年以降)、過去2番目の立地規模となっている。特に、1ヘクタール以上の比較的大きな規模の立地件数が増加傾向にあり、2ヘクタール以上の大規模の立地件数も増えていることが特徴的な動向である。

日本製を求めて旺盛な消費

今、なぜ工場立地が好調なのかをみると、ある特徴が見えてくる。それは、訪日観光客(インバウンド)と生産地が日本であることのメード・イン・ジャパンによる、生産の国内回帰が加速していること。その動きの背景には、ジャパン・ブランドを求めるインバウンドの消費がある。

資生堂が栃木県と大阪府茨木市、さらに福岡県久留米市に新たに3工場を建設している。コーセーは17年に群馬県伊勢崎市で新工場を稼働させた。さらに旺盛な消費に支えられ、新たな工場建設用地の取得を検討する動きもみられる。ユニチャームは紙おむつの海外生産を国内に戻す動きがあり、福岡県苅田町で新工場の建設に着手する。これらはコスト低減と市場拡大を狙って海外進出したものの、メード・イン・ジャパン製の要望に押され国内回帰した例である。厚生労働省の労働経済動向調査でも、09年では、人が足りている企業が不足している企業よりも多かったが、その後、11年から人が不足している企業の方が多くなり、18年にはその差が49ポイントになっている。こうした人材不足もあいまって、AI、IoTなどを含む機械設備への一層の投資を志向させている。

インバウンド、ジャパンブランド需要などによる新工場計画

インバウンドが工場立地を後押し

インバウンド需要による工場立地も加速している。インバウンド需要で販売が伸びている「化粧品」「香水」「医薬品」「健康グッズ」「トイレタリー」などは、メード・イン・ジャパン効果もあり、観光客のお土産品として需要が一段と拡大している。
一方、インバウンドでホテルのトイレットペーパーや歯ブラシなどの日用品需要が増えて、大手製紙会社の日本製紙や王子製紙、日用品のライオンなど新たな工場の設備投資がみられる(表)。

観光庁の統計によると、インバウンドの動向は18年暦年の訪日外国人旅行者は3119万人、消費額は4兆5064億円、訪日外国人(一般客)1人当たりの旅行支出は15万3000円で消費構造に大きな影響を与え、工場立地を後押ししている。このインバウンドの伸びが、さらに新たな工場立地をけん引する可能性が高まっている(図2)。

訪日観光客数の推移

人材確保で地方立地が加速

国内の産業立地は人材不足という大きな課題をかかえている。団塊の世代が25年に75歳を迎え「超・超高齢社会」が近づいている。その中で企業の雇用は「人材確保」が大きな課題となっている。

年明けに大学卒業者の就職に関するヒアリング調査を実施したところ、ほとんどの企業が理工系の学生を求めていることが確認できた。まさに「金の卵」状態になっている。特に中小企業では、来てくれる学生がまったくなく、ほとんど諦め状態にあると人事担当者は言う。

また、日本立地センターの16年度新規事業所立地計画に関する調査では、国内事業環境における不安要因として、「人材不足」が第一に挙げられており、人口減少が国内産業の足を引っ張る要因となっている。国内投資を本格化するためには、こうした不安要素に

対処する必要がある。

国内の事業環境における不安要因

そのような状況の中、昨年、セキュリティー事業大手のラック(東京都千代田区)は、北九州市に国内初の技術開発拠点を開設すると発表した。その進出の大きな要因は、人材確保にあるという。また、富士フイルムは長崎市に人工知能(AI)研究開発拠点を開設する。同社は社会インフラ点検・診断事業の研究開発を長崎大学と共同で行い、自治体との連携でAIビジネスの拡大を計画する。これもIT人材の確保を狙った立地展開と推測する。

また、トヨタ系の自動運転ソフトを担当するメーカーは、以前から岩手県に進出し、県内の理工系学部の卒業生を確保するために拠点を整備して、人材不足に対処している。人口減少時代においても、企業の成長に人材は欠かせないことから、人材を求めて地方への立地を加速させている(図3)。

人材不足は外国人労働力が支え

労働力不足の対応には、外国人労働者の受け入れも検討する必要がある。政府はこのほど外国人労働者の受け入れ拡大措置として、「改正出入国管理法」を改正した。この改正は一定の技能を持つ外国人や技能実習修了後の希望者に新たな就労資格を与えることで外国労働者の雇用の多様化を図るもの。

外国人労働者を巡る大きな政策転換となり、19年4月から順次、業種ごとに外国労働者導入が図られる。しかし、外国人労働者の多くは、首都圏や関西圏などの大都市圏に集中し、地方への供給が危ぶまれる。

そのため、地方における外国人労働者受け入れ促進特区を設け、特区内での外国人労働者による永住権取得までの期間を通常の半分の年月にするなどの条件緩和を図ることで、労働力不足を補うことも一考に値する。この制度は、オーストラリア、カナダですでに制度化されている。国内の人口減少時代の経済を維持するためには、外国人労働者の受け入れが避けて通れない状況になってくる。

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