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コラム

【連載】アジア人材活用術(20)シンガポール 社員教育・研修の充実カギ

【2019年2月8日付 総合4面 日刊工業新聞電子版

優秀な社員の定着には教育が欠かせない

アジアのハブとして、ヒト・モノ・カネを集め、この50年で大きく発展をしたシンガポールは、自国に足りないものを海外から広く受け入れ、それを自身の英知にする事で発展したアジアのベストプラクティスとも呼べる国だ。その英知を支えてきたものに、確立された教育システムがある。

同国では小学校卒業時に「PSLE」という試験が実施され、この試験の得点に基づいて中学校が選択できる。中学校入学時に、既に生徒の学力レベルが分かれているということだ。名門国立大学の進学を目指すには、小学校卒業の時点で既に受験戦争が始まっている。中学、高校と進学する過程で数回の学力試験が実施され、その都度、進路の分かれ道を選ぶことを余儀なくされる。

日本と異なるのは、一度の失敗に対する許容度が少なく、長い回り道を強いられる事。そのため、シンガポールでは幼少期から子どもの教育に対しては非常に熱心だ。社会人になっても教育の熱心さは衰えず、働きながら学位を取得する事も一般的で、国が「Skills Future」という能力開発プログラムを国民に無償で提供をしている。それほどシンガポール人は学ぶ事に意欲的であり、向上心が高い。

海外から来た我々は、それを尊いと思う一方で違和感があるのは、彼らが「学ぶ事に慣れている事」「学びは与えられる事」と捉えているからだ。

日本人は行間把握能力が非常に高く、言われなくても何をすればいいのかを察する能力にたけている。シンガポールでは学習能力は非常に高いが、学んでいない事には手をつけない。実際、当社シンガポール人社員に会社への要望を聞いたところ「教育・研修の充実」を訴える声が強い。転職理由でもスキルアップを求めるケースが多く、「仕事を教えてくれる人がいない」という理由で退職に至るケースも多い。若手社員なら理解できるが、30代過ぎの中堅社員も同じ要望をするので驚きだ。これは教育が就業観に大きな影響を与えているという事だ。

解決策としては会社が「教育・研修の充実」をさせるしかない。具体的には社内でのトレーニングプログラム開発など、優秀な社員にメリハリをつけた教育への投資が大きな意味を持つ。それが彼らの能力向上になり、定着率にも影響する。

もちろん、会社は学校ではない。だが、優秀な人材に選ばれなければ会社は成り立たない。シンガポールで事業を成長させるための施策として、社員教育は不可欠だろう。

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