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コラム

【連載】グローバルの眼/米バイデン政権の焦点「インフラ投資」

【2021年3月31日付 国際面 日刊工業新聞電子版

財政赤字問題大きく

3月11日に1・9兆ドル規模の経済対策、American Rescue Plan法が成立したことで、バイデン大統領が就任以来、最優先で取り組んできた経済対策に目途が立つこととなった。これによって政策の焦点は、バイデン政権が近く詳細を公表するとみられる、インフラ投資へと移りつつある。

インフラ投資による米国経済の後押しへの期待が高まる一方、実現に向けたハードルは決して低くないだろう。最大の要因として挙げられるのが、財政赤字の問題である。コロナ禍以降の経済対策によって、連邦財政赤字は既に大きく膨らんでいるが、3月に成立した大型経済対策によって、財政赤字はさらに拡大することが確定的となった。超党派シンクタンクであるCRFB(責任ある連邦財政委員会)は、2021年度の連邦財政赤字は3・4兆ドル、国内総生産(GDP)比では15・6%と、戦後最大を記録した20年度(同14・9%)からさらに悪化すると試算している。

また3月に成立した経済対策が非常に大規模なものになったことで、米国経済の過熱に対する懸念が高まりつつある。インフラ投資による需要創出の必要性が低下しているばかりでなく、インフラ投資によって景気がさらに過熱することになれば、インフレの加速や長期金利の上昇によって、むしろ経済に悪影響を及ぼすとの見方が広がりつつある。かかる状況下、民主党内の中道派議員からも、インフラ投資に対しては慎重になるべきとの声が出始めている。

さらに、3月の経済対策成立によって、バイデン政権・民主党と共和党の連携が一層難しくなったという事情がある。本来であればインフラ投資は、目指す内容に違いはあれども、共和党も賛同し得る政策であった。しかし、3月の経済対策において、バイデン政権・民主党が財政調整プロセスという手法を用い、民主党単独での成立を強行したことにより、共和党の民主党に対する反発は一層高まっている。インフラ投資については、3月の経済対策とは異なり、財政調整プロセスによる民主党単独での実現には限界があり、共和党との意見のすり合わせが必要になると考えられる。だが、これまでの経緯から、協議は難航することが予想される。

大和総研 シニアエコノミスト 橋本政彦

バイデン大統領は選挙時から環境分野への大規模投資を公約としており、インフラ投資は単なる経済対策ではなく、環境政策を重視するバイデン政権にとって、大きな政策の目玉である。22年の中間選挙に向けた実績作りとして、インフラ投資の実現は政権にとって重要な意味を持っており、バイデン政権による政策運営手腕が問われることになる。(おわり)

◇大和総研シニアエコノミスト 橋本政彦

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