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特集

【地域特集】北海道特集-震災乗り越え 産業を活性化、次代に進む

ロボット導入で食品製造業の生産性向上へ(道総研工業試験場に開設する「ロボットセンター」のイメージ)

北海道では産業力を強化しようと、さまざまな取り組みが行われている。北海道の強みである食品産業の生産性向上や、裾野が広い自動車産業の活性化を推進。次世代の産業として航空・宇宙関連の育成にも乗り出している。一方、9月6日、道内の胆振東部地方で地震が発生。一時は道内全域が停電に見舞われたが、被災地域を除き復旧した。ただキャンセルにより観光業がダメージを受けた。産業界は回復に向けて連携し、次代に向けて進む。

人手不足解消

北海道は広大な土地と豊かな自然資源を反映し、「食」関連産業が盛んな地域だ。2016年の北海道の製造品出荷額は約6兆575億円。このうち食品製造業が約35%を占める。

しかし、労働生産性が低いほか、人口減少に伴う人手不足が課題。こうした状況を打破しようと、北海道経済産業局が産業支援機関と連携し、食品製造業のロボット導入を支援。食品製造業の生産性向上に取り組んでいる。

具体的には、ロボット導入に必要な情報の提供と、食品製造業とロボット事業者をマッチングする。ロボット導入を指導できる人材を育成し、修了生を現場に派遣する。また、北海道立総合研究機構(道総研)工業試験場が11月、ロボット導入を検討する事業者が実機でテストできる「ロボットセンター」を新設する。

ロボット導入により食品製造業の生産性が向上すれば、付加価値の高いモノづくりが可能になる。

存在感高まる自動車

集積進む

道内産業で存在感を高めている自動車産業(トヨタ自動車北海道の全景、苫小牧市)

北海道内の製造業で存在感が高まっているのが、自動車産業だ。トヨタ自動車北海道(苫小牧市)やデンソー北海道(千歳市)などが立地する苫小牧地域周辺に自動車関連産業の集積が進む。地元企業からの部品や設備の調達が行われ、波及効果は大きい。

北海道は積極的に自動車部品産業への参入を支援している。エキスパートとマネジャーによる「参入支援チーム」を設置し、各企業の課題に合わせた支援プランを作成する。東北各県と合同で、中京地区のトヨタ自動車や1次サプライヤー向けに、道内企業の技術を紹介する展示商談会の開催や、大手サプライヤーへの視察も行っている。

また、北海道では寒冷地特有の環境で走行テストができるため、自動車メーカーなどの車のテストコースが28コースある。テストコースが集積している強みを生かし、自動運転の実証試験の誘致を推進したい考えだ。

北海道機械工業会と北海道バイオ工業会は共同でモノづくり現場の視察会を実施

道内産業界も活発な取り組みを展開している。北海道機械工業会(松本英二会長=シンセメック会長)は、北海道バイオ工業会(小砂憲一会長=アミノアップ化学会長)と共同で、モノづくり企業の視察を実施。7月末に2社を訪問した際には両工業会の会員約80人が参加した。

北海道機械工業会はこうした取り組みのほか、18年度の新規事業として、北海道へU・Iターンを希望する技術者と、技術系人材を求めている会員企業とのマッチングを行う予定だ。

また北海道バイオ工業会は18年度から、コスメ分野の団体であるジャパン・コスメティックセンター(佐賀県唐津市)と協力して事業を進める。国内外の化粧品や原材料に関しての情報交換や輸出での連携、合同セミナーの開催を計画する。

人と企業 マッチング

検討会が発足

次代に向けて新しい産業分野に乗り出す動きが出ている。企業や産学官の支援機関で構成する「北海道航空ビジネス検討会」が7月に発足した。室蘭市や札幌市などの企業14社が参画。航空機関連の専門家派遣や勉強会の開催、展示会や商談会への出展などを行う。今後市場が拡大する航空機産業への参入を目指す方針だ。

宇宙関連産業にも期待が高まる。北海道は4月、「北海道衛星データ利用ビジネス創出協議会」を設立した。衛星データを農林水産業やインフラ維持・管理など、北海道の特徴を生かしたビジネス創出を目指す。プロジェクトチームを設け具体的な内容を検討する。

道全域に観光客誘致へ

観光は北海道の主要産業の一つ(北海道庁旧本庁舎、札幌市中央区)

北海道において観光産業は重要だ。17年度の観光客は前年度比2・6%増の5610万人と過去最高を記録。伸び率が著しいのは外国人で同21・3%増の279万人だった。20年度に外国人観光客500万人を目標に掲げる。さらに増やすには、道央地域に集中する観光客を、他地域に促す仕かけが必要。宿泊施設の充実や交通の利便性の向上など、ハード・ソフト両面での整備も求められる。

企業誘致推進

道内の企業立地件数は、09年度の44件を底に回復基調が続く。17年度は100件で3年連続で100件台を維持した。物流関連施設が増加傾向にあるほか、食関連産業が堅調に推移している。

旭川市は、食品関連や機械・金属、インテリアなど多様な業種の企業誘致を進めている。札幌市に次ぐ第2の都市で人口約33万8000人。大学や高専、工業高校などがあり、産業人材を確保しやすい。旭川空港の就航率は約99%とほとんど欠航がない。18年度は大阪や東京で企業立地セミナーを開催するほか各種展示会に出展。10月から市中心部から8キロメートルにある「動物園通り産業団地」の全区画の分譲を始める。

千歳市は、新千歳空港や苫小牧港、鉄道や高速道路などの交通アクセスの利便性をはじめとした特徴を生かして、企業誘致を進めている。立地の優位性について新たな切り口で訴求するため、工業団地を広くPRするためのポスターや、飛行ロボット(ドローン)を駆使したPR動画を18年度中に新たに製作する。また、立地企業に対しても定期的に訪問して情報交換を行い、各企業の課題解決や、増設などの新たな投資喚起につなげていく。

大きな被害

9月6日未明、胆振東部地方に震度7の地震が発生した。道内最大の火力発電所が被災し、道内全域が停電するなど大きな被害を受けた。停電がほぼ解消された現在、観光客のキャンセルに伴う損失が出ている。北海道は約292億円の影響額と試算し、風評被害の払拭に努めていく。

北海道は命名150年の節目の年に厳しい状況を迎えているが、困難を乗り越え、次代の北海道の産業活性化に踏み出すことが期待される。

 

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