神奈川県央エリアで企業進出や既存企業の活性化が進んでいる。さがみロボット産業特区が2018年度から第2期に入り、17日に東京・有明の東京ビッグサイトで国際ロボット競演会「ワールド・ロボット・サミット(WRS)」が開幕を迎える中、エリア内企業がWRSに出展するなど特区や各市のロボット産業支援策の成果が着実に出ている。そうした技術企業が集積し、活気ある県央エリア各自治体の産業支援策と企業動向を「ロボット」「企業誘致・事業継続」「創業支援・人材育成」の3分野から紹介する。
ロボット
中小企業の意地みせる チームでのWRC出場
“聖地”目指す
相模原市は生産性向上などを目的としたロボット導入支援とともに、「ロボットシステムインテグレーター(SIer)」の育成に乗り出した。ロボット導入(ハード)と、人材育成(ソフト)の両面でロボット産業の集積を促進し、“産業用ロボットビジネスの聖地”を目指す。
その一環で同市は17日、東京・有明の東京ビッグサイトで開幕する国際的なロボットの競演会「ワールド・ロボット・サミット(WRS)」(会期21日まで)にブースを出展する。ビッグサイトでのPRと、さがみはらロボット導入支援センター(緑区)の見学会も行う予定だ。
さらにWRSの構成イベントとして開催される「ものづくり」「インフラ・災害対応」など4部門でロボットの技を競う「ワールド・ロボット・チャレンジ(WRC)」にも参戦する。市内企業8社と同市、さがみはら産業創造センター(SIC、緑区)、玉川大学がタッグを組み、「チームさがみはら」として出場する。世界レベルのロボット競技会に「中小企業連合」として名乗りを上げた。
9月中旬のある日。夕方からSICの一室に仕事を終えたチームさがみはらのメンバーが集まり、主催者から貸与された2台のロボットを囲んだ。チームはエンジニアリング、プレス機械メーカー、設計・開発、SIer事業者が加わった異業種メンバーだ。
各社の強み集約
今回、ものづくり部門の「製品組立チャレンジ」に出場する。課題は「ベルトドライブユニット」をロボットで組み立てることだ。この競技は細かい部品の画像認識、ゴム製のベルトやバラ積み部品のピッキング、ペグの挿入とネジ締めなどを行うハンドの設計など高精度なモノづくり力とロボットへの高いプログラミングスキルが求められる。
「ネックは限られた予算での高度なタスク」。チームリーダーで省力化装置・システムの設計開発・生産を手がけるMEMOテクノス(南区)の渡邊将文社長はこう話す。最低限の購入品以外はロボットに装着するハンドやフィンガー、架台などはチーム各社が手弁当で持ち寄る。それだけに「メンバー同士の連携が大事だ。共通の目的に各社の強みを集約したい」(渡邊社長)と意欲を燃やす。
プレス機械メーカーの榎本機工(緑区)は「社内ロボットコンテストでスキルアップしている。精度の良いフィンガーの製作が強み」(製造部の高田祐貴氏)という。多種の商品や設備の開発支援が本業のF―Design(同)は「小さな部品をつかむ精密なロボットハンドの設計で役に立ちたい」(藤本恵介社長)とする。
愛知産業相模原事業所(南区)はロボットシステムや3Dプリンターなどの技術商社。「豊富なシステム構築とオペレーションの実績を生かして貢献したい」(システム製造部の吉田健児氏)と意気込む。メンバーの永進テクノ(緑区)、リガルジョイント(南区)、マイクロテックラボラトリー(同)、未来創造技術研究所(横浜市西区)も知恵を出す。「中小企業の意地」(渡邊MEMOテクノス社長)をどこまで示せるか。注目が集まる。
人材・技術の育成に力
市場展開も支援
厚木市は介護・医療ロボットの普及を目指している。ロボット開発に関する補助金は以前からあったが、18年度から商品化後の市場展開を支援する補助金も用意。上限100万円で、対象経費の2分の1を補助する。企業立地でもロボット関連の奨励制度があり、ロボット関連企業の育成と市内誘致を両面で進めていく。
また、同市は市民のロボット・リテラシーを高めるため、8月にあつぎ市民交流プラザで小学校向けのロボット工作イベントを開催した。9月から小学校に出向いてロボット関連の授業を始めた。子供たちがロボットに触れあう機会を増やし、将来のロボット技術者の育成につなげていきたい考えだ。
大和市では15年にロボット産業の振興と関連技術の育成を狙いに「大和ロボット共同研究協議会(やまとロボ研)」を立ち上げた。18年度は飛行ロボット(ドローン)や排せつ支援ロボットに関する勉強会の実施。市消防本部が配備するドローンの搭載カメラで撮影した画像の伝送速度向上やセンサー技術などの研究を行う。介護施設などで使用する排せつ物を吸い込むロボットの改良にも取り組む。