千葉県では道路網の整備が進展するなど、産業基盤が発展・充実している。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の千葉県区間は2024年度にも全線開通の見通しとなり、千葉県内全域から北関東や東北方面、さらに神奈川方面へのアクセスが大幅に向上する。東京外かく環状道路(外環道)や北千葉道路といった基幹道路の整備も前進している。滑走路新設を含む成田空港の機能強化も進むことになり、国際的な物流拠点などとして、千葉のポテンシャルは今後さらに高まっていく。
圏央道 アクセス向上 早ければ24年度全線開通
国土交通省と東日本高速道路などは3月17日、圏央道の千葉県内区間の大栄ジャンクション(JCT、成田市)―松尾横芝インターチェンジ(IC、山武市)の起工式を成田市内で開き、本体工事に着手した。同区間の延長は約18・5キロメートル。用地買収が順調に進めば24年度の供用開始が見込まれている。同区間の開通により、総延長約300キロメートルの圏央道は全線開通となる見通しだ。
起工式であいさつした森田健作千葉県知事は「圏央道はヒトとモノの流れをスムーズにし、首都圏における交流連携の強化および防災力の向上に欠かせない道路。これまでの整備により県内の観光入り込み客数の増加や企業立地の進展など、県内に好循環をもたらしている。こうした効果を最大限に発揮させるためにも、1日も早い全線開通が必要だ」と強調した。
圏央道は都心から半径40―60キロメートルの位置に計画された高規格幹線道路。17年2月に茨城県内の境古河IC―つくば中央IC間が開通したことで、成田空港から東北・北関東へのアクセスが大幅に向上した。大栄JCT―松尾横芝IC間は圏央道の中で唯一の未着工区間だったが、これが開通すれば、茂原市など千葉県の房総地域からも東北・北関東方面にアクセスしやすくなる。さらに、北関東や成田空港周辺地域から東京湾アクアラインを経由して川崎方面に抜けることで、都心を経由せずに神奈川以西の地域にスムーズにアクセスできるようになる。
成田空港では滑走路新設や夜間飛行制限緩和により、航空機発着枠を年50万回に拡大する機能強化が進むことになった。将来、成田空港と羽田空港を合わせた首都圏空港の発着枠は年100万回に拡大する見込み。両空港は圏央道とアクアラインで結ばれることから、千葉県の房総半島は両空港を効率よく利用できる地域としても注目を集めそうだ。
外環道千葉区間 6月2日開通
都心から約15キロメートルの位置に計画された環状道路である外環道では、三郷南IC(埼玉県三郷市)―高谷JCT(千葉県市川市)の区間が6月2日に開通する。同区間の延長は15・5キロメートル。市川市や浦安市の千葉県湾岸エリアからも北関東や東北方面にアクセスしやすくなる。千葉県内の主要な高速道路である東関東自動車道から、常磐・東北・関越自動車道への所要時間は18分―26分短縮する見通しだ。
市川市(外環道)と成田市を結ぶ北千葉道路の整備も前進している。印西市から成田市間の約13・5キロメートルの区間が18年度内に開通予定(一部暫定2車線)となった。未整備区間だった市川市―船橋市の区間についても、千葉県は1月に環境アセスメント・都市計画手続きを開始。北千葉道路は計画延長約43キロメートルで、都心と成田空港を最短ルートで結ぶ幹線道路となることが期待されている。
千葉県ではこうした基幹道路の整備進展を踏まえ、基幹道路にアクセスするための道路整備にも力を入れている。
物流施設の立地 高水準 交通利便性がポイント
経済産業省や千葉県のまとめによると、製造業や物流施設などの立地件数は17年に56件だった。内訳は製造業などが21件で、物流施設などが35件だった。大消費地の東京に隣接しているという特性などから、製造業では食料品製造業の立地が目立っている。
圏央道の延伸など交通の利便性が高まっていることから、近年は特に物流施設の立地件数が高水準で推移している。6月に開通する外環道千葉県区間付近の流山市や松戸市には日本GLP(東京都港区)や大和ハウス工業、三菱UFJリースなどが大型物流施設を完成・計画中だ。圏央道沿線の成田市周辺などでも、将来の全線開通を見込んで「すでに土地の奪い合い」(成田市内の不動産関連企業経営者)といった状況もうわさされている。
また県は、新たに整備した「茂原にいはる工業団地」(茂原市)と「袖ケ浦椎の森工業団地」(袖ケ浦市)の2回目の入札を17年度に行い、売れ行きは好調となっている。茂原にいはる工業団地は圏央道の茂原北ICから車で約5分と至近距離にあり、都心からは車で60分圏内に位置する。袖ケ浦椎の森工業団地も東関東道館山線の姉崎袖ケ浦ICの近くにあり、都心まで車で約50分というアクセスの良さがポイントで、両工業団地とも人気を集めている。