神奈川県内の魅力が向上している。インフラ整備や道路網の整備により、製造業や物流業などの企業活動も活発化しており県内に本社や研究所、工場の整備が加速している。けん引するのは横浜市、川崎市、相模原市といった政令指定都市だ。特に横浜市の産業・商業の中心地「みなとみらい21(MM21)地区」は本格利用エリアが8割を超えた。県内外からの誘致や事業環境の整備により“経済の中心地”としてさらなる飛躍が期待される。
県内各地ですすむインフラ整備と企業誘致
来年度めど100件目指す
神奈川県の企業誘致施策が順調に進んでいる。県では総合計画「かながわグランドデザイン第二期実施計画」で2015年度から18年度までの4年間に100件の企業誘致を目標としている。17年度はその3年目であり、これまでの実績は71件(2月15日現在)。3月にも数件の誘致が決まる予定で、17年度末までには75件に達する見込みだ。
神奈川県は国から「さがみロボット産業特区」「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」「国家戦略特区」の三つの特区に指定されている。そのため企業にとっては制度上の規制緩和が期待できる。また、張り巡らされた鉄道網や道路網、大規模な港湾を抱えるだけでなく羽田空港に隣接するなど交通インフラも充実している。全国屈指の労働人口を有する地域でもあり、人口が多いことはマーケットが近いことでもある。特に近年、景気の好転により、有効求人倍率が上昇しているため比較的人材を採用しやすい状況にある。
神奈川県は16年度から企業誘致施策「セレクト神奈川100」を進めている。最大の特徴は「企業誘致促進補助金」として県外・国外から立地した企業を対象に、土地や建物、設備などに対して投資額の5%、上限5億円。さらに特区制度活用の場合は投資額10%、上限10億円を補助する。16年度から補助金の対象となった企業は19件で、計画上の総投資額は約1014億円にのぼる。
これまでの実績71件のうち県外から誘致した企業が44件、国外からは同27件だった。国外と県外では立地の形態が異なり、県外の場合は大規模な投資を伴うケースが多い。国外の企業の場合は、例えば日本支社や日本法人、駐在事務所などのオフィス拠点となっている。
企業、規制緩和に期待/交通網充実
補助金対象外だが、県内事業所のうち再度県内に工場を建て替えたり、移転したりする「再投資」の場合、同セレクト神奈川から数えてこれまで29件、787億円の事業計画を認定している。
村田製作所や三菱電機、旭硝子など大企業の大型誘致も実現している神奈川県。産業労働局産業部企業誘致・国際ビジネス課では市町村のほか、金融機関や不動産会社などと連携を強化し、投資や立地に関する情報共有などを進めている。「情報があれば県や対象の市町村と営業する。地道な努力が重要」という。
セレクト神奈川100では、1年間で国内・海外から誘致する企業数を25件としている。同企業誘致制度の第4コーナーとなる18年度も25件の企業誘致を目指している。同企業誘致・国際ビジネス課では「企業誘致はただ誘致するだけではない。誘致した企業が、県内の企業に発注を出すなど、県内産業の活発化が期待できる。雇用の確保にもつながり、経済の活性化を実現できる。まさに行政が行う産業政策の基幹だ。1社でも多く誘致をしたい」と意気込む。
企業誘致に関する2018年度予算の特長
神奈川県は18年度予算で企業誘致と海外展開支援に関する事業として58億9102万円を計上する。そのうち「セレクト神奈川100などによる企業誘致の促進」としては57億1878万円を用意。18年度に一部刷新される「産業集積促進事業費」では従来の倍にあたる585万円を確保する。同事業費は、企業誘致施策の周知を行うため、知事によるトップセミナーや不動産事業者などと連携した県外企業向けセミナーを実施するためのもの。
これまでは東京都内や神奈川県で実施していたセミナーを、18年度は関西圏や中部圏で実施する考えだ。「新たに首都圏に拠点を設けたいと思う企業に向けてアピールしたい」(企業誘致・国際ビジネス課)としている。