“未来型都市”へ整備進む
横浜市中区と西区にまたがるビジネス・商業・観光の中心部「みなとみらい21(MM21)地区」の開発が順調だ。2017年12月26日現在では施工済み、建設中、計画中を含めた本格利用が決定しているエリアは約83%にのぼる。今後もさまざまな企業が進出を予定しているほか、展示場の再整備、あらたなホテルの建設なども控える。横浜だけでなく神奈川県全体の経済をけん引しているMM21地区の現在を追った。
横浜市「企業立地促進条例」拡充 大企業本社・R&D拠点 集積
MM21地区は企業やショッピング・文化施設などの集積地として、横浜経済の中心地となっている。もともと三菱重工横浜造船所や国鉄高島線の貨物操車場などがあった。83年に「みなとみらい21」事業としてスタートし“21世紀にふさわしい未来型都市”をテーマに整備が進められている。16年では就業者数は約10万3000人、事業所数は約1760社、同地区を訪問する人は約8100万人となっている。
企業誘致関連では、横浜市は15年4月に「企業立地促進条例」を拡充し、MM21地区に本社や研究所を建設する企業へ対し、助成金の補助率を10%から12%へ引き上げた。補助上限も家屋・設備は最大40億円、土地は10億円としている。
その効果もあって、18年末には資生堂が基礎・基盤研究や顧客と直接交流できるオープンラボ「グローバルイノベーションセンター」を開設する。19年には京浜急行電鉄が「京急グループ本社ビル(仮称)」を設置するほか、20年には村田製作所が、産学官連携を強化し自動車、エネルギー、ヘルスケア、IoT(モノのインターネット)などの分野で新技術を創出する研究開発拠点を稼働する予定。また、横浜市が17年4月に立ち上げたものづくり・IT産業の集積を生かしたオープンイノベーション施策「I・TOP(アイ・トップ)横浜」とも相まって大企業の本社やR&D拠点として集積が進んでいる。
MM21地区にはパシフィコ横浜を代表とする国内でも最大規模の多目的ホールを備えており、増加するMICE(国際会議、展示会、視察研修)の需要に対応している。18年2月には20年に開業予定の新MICE施設の名称を「横浜みなとみらい国際コンベンションセンター(通称パシフィコ横浜ノース)」に決定した。
客船の受け入れや税関、商業施設が一体となったターミナル施設「新港地区客船ターミナル(仮称)」(横浜市中区)の整備も進む。横浜市と市内の7社1団体の企業グループからなる「Yokohama Pier9」が実施する。“食”をテーマとした商業施設や総部屋数200室程度のホテルも開設する予定。18年夏に着工し、19年春頃の開業を見込む。
経済波及、16年約2兆円
横浜市が5年ごとに推計しているみなとみらい21地区の経済波及効果によると、「建設投資による市内への経済波及効果」は83年の事業着手以降、港の埋立やインフラ整備、横浜ランドマークタワーなどの建物建設などで約2兆8827億円になる。また、「都市稼働による市内への経済波及効果」は16年の1年間でみると飲食、サービス事業などの個人消費や企業活動、パシフィコ横浜でのMICEなどにより約2兆446億円になるという。
京急グループ本社ビル建設
120周年記念事業
京浜急行電鉄は、2019年秋に横浜市の産業・観光拠点、みなとみらい21(MM21)地区に「京急グループ本社ビル(仮称)」を建設する。建物は地上18階、地下1階。同社をはじめグループ企業約10社の本社機能も集約し、業務の効率化を図る。グループを含めた社員数は約1200人。新本社の建設・移転は同社の創立120周年を迎えた記念事業の一環として進めている。
新たな観光スポットも
みなとみらいの新本社ビルにはオフィス機能だけでなく、観光やにぎわいを創出する施設も整える。その一つが1階部分に設ける予定のミュージアム(博物館)だ。1898年設立の大師電気鉄道をルーツとする同社の歴史などを紹介するほか、「京急デハ230形」などかつて活躍していた保存車両も展示する。鉄道模型ジオラマや現実に近い車両の運転操作を体験できる「シミュレーター」もそろえる。MM21地区の新たな観光スポットとして横浜のまちづくりに貢献する。