企業立地ニーズの変化に柔軟対応
茨城県内の工場立地が好調だ。経済産業省がまとめた2019年通年(1―12月)の工場立地動向調査では、県内の工場立地面積は150ヘクタールで全国1位を獲得。交通インフラの充実を背景に県南・県西エリアへの立地が増えているほか、工業団地の価格引き下げなどの効果により県全域で引き合いが増加している。茨城県では生産拠点の国内回帰といった新たな国内投資の動きにも対応し、県内へのさらなる立地促進を図っている。
県全域で引き合い増加
19年の県外企業の立地件数は40件で全国1位となり、県内外さまざまな業種の企業が茨城の立地環境を評価していることがわかる。
その背景にあるのが陸・海・空の交通インフラの充実だ。特に幹線道路網の整備では、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の茨城県内区間(境古河インターチェンジ〈IC、茨城県境町〉―つくば中央IC〈同つくば市〉)が17年2月に開通。これにより、首都圏内外とのアクセスが大幅に向上したことで、県南・県西エリアでの立地件数が増加した。
圏央道の茨城県内区間では22年度から4車線化が順次始まる見通しとなっており、交通の利便性は今後もさらに高まることが期待されている。
圏央道沿線エリア中心に用地開発
立地ニーズの高まる圏央道沿線エリアを中心に、新たな産業用地の開発計画も進んでいる。
県は、産業用地開発に取り組む県内市町村を支援する「未来産業基盤強化プロジェクト」を立ち上げ、今年6月に第1次として、筑西市の「田宿地区拡張」と境町の「猿山・蛇池地区」の2地区を選定した。今後は2地区の開発に関する手続きなどを支援し、造成事業着手までの期間の短縮を目指す。
立地企業向けの優遇制度も充実している。県は、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)、次世代自動車といった成長分野の研究所や本社機能などの県内移転に最大50億円を補助する「本社機能移転強化促進補助」などの補助制度を創設。付加価値の高い産業を県内に誘致する施策の強化により、質の高い雇用を創出する狙いもある。一方、県央エリアなどの既存の工業団地については、分譲価格を1―5割引き下げる施策を18年に実施し、県内全域の産業用地の優位性を高め、引き合いの増加に結びつけている。
現在、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、企業では設備投資戦略を見直す動きが広がる。県ではそうした動きに対応し、生産拠点の多元化や国内回帰に取り組む企業の県内への立地を支援する。
サプライチェーン(部品供給網)の強靱化に向けて国が創設した補助制度「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」を活用して県内に生産拠点を新設する企業に対し、県独自で原則10%を上乗せ補助する仕組みを導入した。上乗せ補助の対象は事業内容に先進性や必要性があることを要件とし、次世代自動車やIoT関連の電子部品といった成長分野を含める。
立地企業各社の戦略に応じ、生産拠点を迅速に開設する動きを支援する。
県営業戦略部の石塚孝之立地推進課長は「コロナ禍で大変厳しい環境だが、今後も多くの優良企業の立地に結びつくよう積極的に誘致を推進していきたい」と意気込む。