2018年の大分県の企業立地件数が53件となり、過去最高を更新した。17年の51件を上回り、15年以降4年連続の増加だ。景気回復もあり、立地動向は全国的にも堅調。そんな中で同県が好調を維持するのは「集積が集積を呼ぶ構図が続いている」(大分県企業立地推進課)ことが背景にある。
(大分支局長・宗健一郎)
大分県のまとめによると業種別では、その他製造(13件)、輸送用機械(12件)、精密機械(12件)が上位を占める。情報通信も8件と多かった。
地域別では自動車産業が集積する中津市、宇佐市などの北部地域が22件で、ここ数年の好調を維持。健闘したのが17件の大分市で市町村別では1位だった。コールセンターなど雇用面を重視した立地のほか、陸上、海上両面の物流に優れた「大分流通業務団地」への進出が相次いだ。
県では中津市に車体組立工場があるダイハツ九州のほか、大分市内の石油コンビナートで新日鉄住金大分製鉄所や昭和電工などが操業している。デジタルカメラなどの精密機械に加え、歴史ある半導体の製造拠点もあり、多様な産業を受け入れる基盤がある。
一定の仕事量が見込める産業集積地は立地の選定で有利。さらにこうした企業進出が「地場企業の力にもなっている」(大分県企業立地推進課)面もあり、産業構造にさらなる厚みを生むことにつながっている。
一方、企業立地が集中した地域では受け皿となる用地の不足も懸念される。そんな中で県は、これまで目立った産業がなかった“空白地帯”への誘致策としてサテライトオフィスの整備を進める。
17年に東京のIT企業2社が立地した離島・姫島村には、コワーキングオフィスを整備した。今年春には山間部の佐伯市にもサテライトオフィスをオープン。働く場所を選ばないIT関連企業の取り込みに力を入れる。
全国的な人手不足で、地方が人材確保の容易さを企業誘致の武器にできた時代は終わりつつある。各自治体には企業動向を慎重に見極めながら、業種や規模に応じたバランスの良い立地促進策が求められる。