日本とミャンマーが共同で開発する「ティラワ経済特区(SEZ)」内の工業団地が、トヨタ自動車の進出で再び注目を集めている。部品を納めるティア1(1次下請け)、ティア2(2次下請け)の企業が入居に関心を示しており、同SEZ関係者は「追い風が吹く」と喜ぶ。今の規模では需要に対応できないとみて、同SEZの事業会社は200ヘクタール拡張する方向で検討を進めている。(大城麻木乃)
ティラワSEZは、2014年1月に日本・ミャンマー両政府と日本の総合商社3社などが合弁で事業会社を設立して話題となった。工業団地の総開発面積は2400ヘクタール(品川区と同規模)と広大で、段階的に開発が進んでいる。すでにスズキがミャンマーで2カ所目の工場を設置済み。このほか、トヨタ自動車が同工業団地に完成車工場を建設し21年から小型ピックアップトラック「ハイラックス」をノックダウン方式により年2500台規模で生産すると5月末に発表している。
ミャンマーの新車販売台数は18年に1万7500台と、100万台規模のタイやインドネシアには遠く及ばないが、17年比で2倍増となっている。このまま伸び続けると2年後には10万台を突破するとみられている。
同SEZの造成・販売・運営を担う合弁会社ミャンマー・ジャパン・ティラワ・ディベロップメント(MJTD)によると、ティア1、ティア2が進出する目安の市場規模が10万台で、進出に向け具体的な検討を始めた企業が多いという。
企業の海外進出を支援する日本貿易振興機構(ジェトロ)でも、「トヨタの発表以降、ミャンマーへの問い合わせが増えた」(アジア大洋州課)という。
MJTDによれば、今回、トヨタが進出する「ゾーンB」と呼ばれる区画は、第1期(開発面積101ヘクタール)では8割が成約済み、2割が商談中でほぼ埋まる見通しという。第2期(同77ヘクタール)では5割が成約済み、第3期(46ヘクタール)も1社で半分の面積を購入する方向で検討中の企業があり、21―22年に第3期が完売するめどが立ちつつあるとしている。そのため、既存の区画の南側に新たに200ヘクタールの区画を整備する案が検討されている。「20年中には造成を始めたい」(MJTD関係者)という。
ミャンマーをめぐっては近年、イスラム系少数民族ロヒンギャ族への対応が国連で迫害にあたると指摘され、欧州を中心に投資を手控える動きがあった。一部の邦銀も企業のミャンマー投資への融資を見送るなどの影響が出た。だが同工業団地には5社の欧州企業が入居し「欧州は政治的な圧力はかけるものの、経済的な制裁までは考えていないようだ」(MJTD関係者)。このため、欧州や日本からの投資も再び戻る兆しがあるという。