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コラム

【連載】グローバルの眼/南米で拡大する中国の援助外交

【2019年4月24日付 国際面 日刊工業新聞電子版

アルゼンチンでは懸念の声も

 中国は今や、地球の向こう側南米でも露骨な援助外交を展開している。ブラジルと並ぶ南米の大国アルゼンチンでさえ、中国の経済力には逆らえないようだ。

このことを如実に示すのが、アルゼンチン南部パタゴニア地方で昨年春から稼働した中国の「宇宙探査研究センター」の存在だ。この施設は同地方ネウケン市郊外の砂漠地帯にあり、200ヘクタールの広大な敷地内には巨大なアンテナが設置されている。中国当局は「有人月面着陸や火星探査の目的に使用され、宇宙の平和利用のため」と説明、軍事とは関係がないと強調する。

だが、この中国の言い分を額面通り受け取る向きは少ない。例えば、米国の軍事専門家の多くが同センターについて「ほかの国の衛星通信を傍受したり、衛星の動きを妨害する軍事利用が目的」(米国防総省筋)と指摘する。中国の「宇宙基地」と呼ばれるゆえんである。

この「宇宙基地」をめぐり、アルゼンチン国内では以前から懸念が広がっていた。特に、二国間協定でアルゼンチン当局が敷地内に事実上立ち入りできない治外法権扱いされる点について、昨年4月の本格稼働以後、「中国側にもっと強く、アルゼンチンの主権を主張すべき」(ブエノスアイレスの有力紙「クラリン」)との声が高まった。

時事総合研究所客員研究員 山崎真二

そして、昨年12月のブエノスアイレスでのG20サミット。習近平主席はマクリ・アルゼンチン大統領との首脳会談で通貨スワップ協定の上限額拡大、インフラ整備での協力など大型の経済支援を表明した。

ブエノスアイレスの外交筋は「中国の積極的な援助外交にアルゼンチン側は『宇宙基地』に文句をつけることは全くできなかったようだ」と語る。実際、マクリ大統領は首脳会談後の記者会見で「中国との戦略的パートナーシップの深化と『一帯一路』構想への協力を強化する」と述べている。

◇時事総合研究所客員研究員 山崎真二

 東京外大卒。70年時事通信社入社。南米特派員(ペルー駐在)、ニューデリー特派員、ニューヨーク支局長、外信部長などを歴任。08年2月から17年3月まで山形大教授、時事総合研究所客員研究員。

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