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コラム

【連載】グローバルの眼/中国経済、一時回復も持続は期待薄

【2019年4月26日付 国際面 日刊工業新聞電子版

債務圧縮・米中摩擦響く

中国経済に明るい兆しが見えてきた。これまで3四半期連続で減速を続けていた中国経済は、2019年1―3月期に前年比6・4%増と前四半期(同6・4%増)と同率にとどまり、一年ぶりに減速が止まることとなった。特に3月の景気指標は明らかな改善を示した。3月の鉱工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)は前年比8・5%増と、1―2月期の同5・3%増を3・2ポイントも上回った。また、3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50・5%と昨年12月の49・2%を1・3ポイント上回り、4カ月ぶりに好不調の境界線となる50%を上回った。

しかし、春節連休明けの3月は例年、1―2月期を大きく上回ることが多く、4月には反動減となる可能性がある上、「デレバレッジ(債務圧縮)」と「米中貿易摩擦」という景気悪化の根本原因も残っている。18年に中国経済が減速した原因のひとつは「デレバレッジ」である。中国政府が「デレバレッジ」に舵(かじ)を切ったのは、17年の党大会後に開催された中央経済工作会議でのことで、20年までの中期的な目標とされている。中国の非金融企業が抱える債務残高は国内総生産(GDP)比約150%とG20諸国で最大。このまま放置すれば将来に大きな禍根を残すと考えたからだ。債務が拡大した発端はリーマン・ショック後の景気対策(いわゆる「4兆元の景気対策」)にあるが、15年のチャイナショックで株価が急落した時の景気対策でも債務が上乗せされた。そして、中国政府が「デレバレッジ」を推進した18年、インフラ投資は急減速し、15年10月に導入された小型車減税が17年末で撤廃されたことも自動車販売の足かせとなった。

ニッセイ基礎研究所 経済研究部・上席研究員 三尾幸吉郎

また、18年の中国経済には「米中貿易摩擦」も大きな打撃となった。米中対立が激しさを増す中で、中国経済の将来を担う「中国製造2025」関連産業で先行き不透明感が強まり、中国株は大きく下落し、16年1月に付けた安値を割り込み、消費者マインドを冷やして、自動車販売は前年割れに落ち込むこととなった。

さらに、米中対立は「産業のコメ」といわれる集積回路(IC)にも悪影響を及ぼし、データセンター建設ラッシュは沈静化、中国における仮想通貨バブル崩壊でマイニング需要の落ち込み、次世代通信規格(5G)への移行期に差し掛かったスマホの買い控えも重なり、ITサイクルはピークアウトした。最近のICの生産量を見ると、3月は138億個と1―2月の平均(114億7500万個)を大きく上回り持ち直したように見える。だが、18年3月の149億6000万個をまだ下回っており、IC生産のトレンドは依然として下向きのままだ。米中首脳会談の設定も先送りが続いており、現在は5月上旬か6月上旬と伝えられるが、先行き不透明感は晴れない。

足元では明るい兆しが出てきた中国経済だが、景気が持ち直せば「デレバレッジ」が再び推進される可能性が高く、「米中貿易摩擦」の火種もくすぶる中では先行きの不透明感は払拭(ふっしょく)できないため、景気は一時的に回復しても、持続的な回復は期待薄といえるだろう。

◇ニッセイ基礎研究所 経済研究部・上席研究員 三尾幸吉郎

82年日本生命保険相互会社入社。94年米国パナゴラ投資顧問派遣。00年ニッセイアセットマネジメントを経て、09年よりニッセイ基礎研究所経済研究部。日本証券アナリスト協会検定会員。研究・専門分野は中国経済。

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