Powered by 日刊工業新聞

コラム

【連載】アジア人材活用術(18)韓国 儒教の国の人材マネジメント

【2018年11月30日付 総合4面 日刊工業新聞電子版

人材紹介ビジネスに携わっている中で、一番落ち込む出来事がある。顧客企業から紹介した人材の退職話を聞いた時だ。だが、冷静に考えると我々以上に落胆しているのは顧客企業だ。また一から採用活動することを考えると、人材を紹介した立場として申し訳ない気持ちになる。

韓国の取引先企業で組織管理の悩みを聞くと「人材採用の難しさ」と同様に「優秀な人材の離職防止」を挙げる方が非常に多い。2018年に当社が実施した企業向けアンケートでは、在韓日系企業の37%が離職率10%以上と回答した。

では、離職する人は元来ジョプホッパーだったのだろうかというと、決してそうではない。転職希望者に行ったアンケートでは、全体の43%が転職後は定年まで同じ会社での就業を希望している。日本と同様に終身雇用の制度が崩壊しつつある韓国で、この数値は高い。

日系企業を渡り歩く人は少なからず存在するが、大多数は入社後の理想と実態のギャップで退職することが韓国では、よく起こる。

離職を防ぐためにはどうすれば良いか。離職の理由は多岐にわたるため一概に答えは出せないが、韓国では直属の上司や先輩社員との人間関係が引き金になることが多い。

例を挙げると「チームの雰囲気が悪い」「上司の感情起伏が激しく、言葉がきつい」などがある。これらは実際に転職をした人から聞いた言葉で、該当する上司や先輩は悪気がなかったり、気づかなかったりする場合も少なくない。

社員が抱える問題は上司や先輩が絡むことが多いということだ。通常は仕事の相談相手となる人が問題の種であることから、会社に問題提起しにくい。そのため、長く働きたいと望む人が多いにもかかわらず、誰にも相談できずに退職する人が相次いでいる。

韓国は儒教の国であり、徴兵制もある背景からか上司部下の関係が垂直型であるため、上司には逆らえないという風潮が強い。韓国人は一度決意すると、決めてから退職までのスピードが非常に早いため、離職率を下げるためにはこのような問題を経営者や人事が常日頃把握しておく必要がある。

優秀な人材の離職は採用にかかった労力やコストが無駄になるだけでなく、事業成長の停滞や機会損失、さらには機密情報流出リスクにつながることもあるため、極力避けることが重要だ。また職位が上位であればあるほど、これらの影響やリスクが大きくなることも見逃せない。

入社後に面談するなどの仕組みを導入するとよいだろう。

また、多くの在韓日系企業は社員数が比較的少ないことから、社員が入社した際は社長や経営陣も自ら定期的に仕事に関与することを薦めたい。

ページトップ