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特集

【連載】沖縄でつくる 製造業の選択(特別編)広がる再生医療、進出の呼び水に

【2018年11月8日付 中小企業・地域経済面 日刊工業新聞電子版

健康長寿の島と呼ばれた沖縄。生活習慣の変化などから現在は状況が変わった面がある。一方、医療関連では先進的な研究が進む。沖縄県は2018年度、製造業誘致の方針を新たに決定。対象の一つをバイオや医療機器とした。従来の全方位から高付加価値な製品分野に絞った形だ。広がりを見せる医療技術と製造業との相乗効果に期待がかかる。

豊見城中央病院などによる移植手術報告の記者会見。細胞シートによる移植手術には専用デバイスを開発した

西普天間に拠点

15年3月に返還された宜野湾市の米軍施設「西普天間住宅地区」。この跡地には琉球大学医学部と付属病院が移転を予定する。国と県が構想する国際医療拠点の中核施設だ。

琉球大は脂肪幹細胞による再生医療分野で臨床成果を上げている。また、同大学発ベンチャーのグランセル(沖縄県西原町)は、再生医療の副産物である細胞培養液を原料に高機能化粧品を開発。県内で製造販売する。

再生医療では、豊見城中央病院(同豊見城市)が食道がん手術後の食道狭窄(きょうさく)に対する分野で臨床実証中。東京女子医科大学から技術移転した細胞シートを活用する。7月には「世界初」(同院)の手術を中頭病院(沖縄市)と実施した。

新たな機器需要

手術は患者の口腔(こうくう)粘膜細胞をシート状に培養し、内視鏡で患部に貼り付ける。移植のために専用デバイスを開発した。新たな医療領域では関連機器の開発や製造のニーズも生まれる。

フルステム(那覇市)は、そんなニーズを捉えたベンチャーメーカー。再生医療に不可欠な細胞大量培養を、10億個単位で実現する装置を4月に発売。社長が医師・研究者である強みを生かし、南部徳洲会病院(沖縄県八重瀬町)などと実証研究を進めている。

 

【連載】沖縄でつくる 製造業の選択

沖縄県の経済特区への企業誘致が好調だ。県中部の「国際物流拠点産業集積地域うるま・沖縄地区」の立地企業数は2018年3月末で67社となり、前年から9社増え過去最高の企業数を記録した。立地の形態にも変化が見られる。これまでは賃貸工場への入居がメーンだったが、分譲地への進出も多くなっており、分譲地不足の懸念すら出始めた。

沖縄は製造業の“不毛の地”という不名誉な呼ばれ方もあった。事実、県内総生産に占める製造業の割合は低下傾向で、この10年間はおおむね4%台で推移する。好調な観光がけん引し、伸びを見せる建設業やサービス業とは対照的だ。だが、沖縄でモノづくりをする企業は確実にいる。なぜ「沖縄でつくる」のか。立地企業から答えを探る。

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