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コラム

【連載】グローバルの眼/中国、個人消費持ち直し

【2020年9月2日付 国際面 日刊工業新聞電子版

医療・経済促進策を拡充

中国では新型コロナウイルス禍で落ち込んだ個人消費が持ち直し始めた。代表指標となる小売売上高を見ると、新型コロナ禍で経済活動がほぼ停止した1―3月期には前年比19.0%減と大きく落ち込んだが、4月には同7.5%減、5月には同2.8%減、6月には同1.8%減、7月には同1.1%減と月を追うごとにマイナス幅を縮め、前年水準までもう一歩のところに漕(こ)ぎ着けた。

内訳が公表される一定規模以上の小売り統計を見ると、1―3月期には飲食が前年比41.9%減、衣類が同32.2%減、自動車が同30.3%減、家電類が同29.9%減、家具類が同29.3%減、化粧品が同13.2%減、日用品類が同4.2%減と軒並みと大きく落ち込んだ。

しかし、その後の4―7月期を筆者が集計したところ、飲食が前年比15.9%減、衣類が同6.5%減とマイナス幅を縮め、自動車は同2.3%増、家電類は同3.4%増、家具類は同0.0%増と前年水準を回復。さらに日用品類は同12.7%増、化粧品は同11.6%増と2ケタの高い伸びを示した。そして、ネット販売(商品とサービス)は4―7月期に同16.3%増と新型コロナ禍前の成長の勢いを取り戻すこととなった。

個人消費が持ち直してきた背景には、新型コロナウイルス感染症(COVID―19)が収束に向かう中で、経済活動の再開がゆっくりとだが途切れることなく着実に進んでいることがある。ここもとの新規確認症例の推移を見ると、図表に示したように断続的にクラスター(感染者集団)が発生し、4月には海外からの帰国者の感染確認が増えて一時100名を超えた。6月には北京市の食品市場でクラスターが発生して一時50名を超え、7月には新彊(しんきょう)ウイグル自治区と遼寧省のクラスターが重なって一時100名を超えたものの、経済活動を再停止した地域は限定的で、諸外国に比べると小ぶりな感染拡大に留まった。

そして、中国では1日当たり484万人分のPCR検査体制を整えた上で、7月には医療従事者らを対象にしたワクチンの緊急投与を開始し、行政区(省、直轄市、自治区)をまたがる国内団体観光ツアー催行を再開した。9―10月には“消費促進月”を設定、経済活動の正常化がもう一段進む。

新型コロナ禍の“第2波”を恐れる中国政府は、消毒などの防疫措置を維持しつつ、通行証明書となる“健康コード”を活用した管理手法を導入、社会的距離(ソーシャル・ディスタンシング)を堅持する方針であるため、回復ペースは決して速くはないだろう。しかし、世界的大流行(パンデミック)が収まらない中では、海外旅行から国内旅行に切り替える人が増えると見込めるため、観光や文化・娯楽はゆっくりとだが着実に回復に向かうと見ている。

ニッセイ基礎研究所 経済研究部・上席研究員 三尾幸吉郎

ただし、新型コロナウイルス(SARS―CoV―2)にはまだ不明な点が多くあり、不確実性が高い点には留意しておきたい。もし新型コロナ禍の“第2波”が大波となって襲来する事態となれば経済活動の正常化も頓挫しかねないからだ。

◇ニッセイ基礎研究所経済研究部・上席研究員 三尾幸吉郎

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